競馬・競艇などの公営競技のネット投票割合が高まり「ギャンブル依存に陥り、多額の借金を負った」との相談が支援者や医療機関に相次いでいる(撮影/大野洋介)
競馬・競艇などの公営競技のネット投票割合が高まり「ギャンブル依存に陥り、多額の借金を負った」との相談が支援者や医療機関に相次いでいる(撮影/大野洋介)
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 公営ギャンブルのオンライン化が進み、気軽に始める若者が増えている。短期間で多額の借金を抱え、不眠に陥るなどオンライン特有の問題も指摘されている。 AERA 2022年6月20日号の記事を紹介する。

【図】ギャンブルのネット利用が急激に上昇

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 千葉県内に住む女性(50)の公務員の次男(24)は、2019年ごろからオンライン競輪などにはまり、昨年5月までの約1年半で、総額700万円の借金をつくった。

「最初は160万円、次は200万円、最後は350万円と、無心が重なるたびに借金額は増えました」(女性)

 最終的に次男は同僚の金を盗むまでになった。女性は「私の育て方がダメだったんだ、息子を殺して自分も死のう」と思い詰めるまでに。その後、ギャンブル依存の家族会につながり、依存症者の回復施設「グレイス・ロード」(甲府市)へ息子を入所させた。しかし本人が4カ月で退寮してしまい、現在は連絡を取り合っていない。

 東京商工リサーチの調べによると、公営競技の競馬、競輪・オートレース、ボートレース(競艇)の売上高は、21年9月までの1年間で4兆311億円と、前年実績を7.1%上回った。中でも伸びているのはインターネットで馬券や車券を購入できるオンライン投票だ。

 地方競馬では、売り上げに占めるオンライン投票の割合が17年の68.7%から、20年には93.2%へと急増。20年のデータでは、中央競馬も9割を超えており、オートレースやモーターボート(競艇)も売り上げの約8割がネット投票だ。

 依存症外来の精神科医は言う。

「競走馬は見たこともないが、競馬に多額の資金をつぎ込んだという外来患者も出てきた」

 公営ギャンブルは、スマホさえあればいつどこからでも投票でき、“お上の公認”とあって学生らも気軽に始めやすい。そこに「落とし穴」が潜んでいる。

「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表によると、コロナ禍以降、同会には公営ギャンブル依存に関する相談が急増した。

「営業時間が短くなった飲食業のスタッフが、空き時間に始めてはまってしまった……というケースも多い。特に若者の依存が深刻です」(田中さん)

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