万波中正も10本塁打をマーク。打率.224と、確実性は課題だが、ツーストライクに追い込まれるとノーステップ打法に切り替えてコンパクトに打つなど創意工夫が見られる。パンチ力のある万波はミートしただけでもフェンスを越えていく。清宮同様に大化けする可能性を十分に秘めている。

 選手の能力を最大限に生かす「適材適所の配置」も光る。吉田輝星は先発から救援に配置転換され、自慢の直球を武器に好投を続ける。表情にも自信がよみがえり、躍動感を取り戻した。誰もが驚く抜てきも敢行した。ファームで13試合に登板して防御率12.79と結果が出ていなかった柿木蓮が今月10日に1軍初昇格。新庄監督が「直球の質」を評価したのが理由だった。柿木は大阪桐蔭で根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)と同学年。春夏の全国連覇に大きく貢献したが、プロ入り後は伸び悩み、3年間1軍登板がなかった。

 柿木は指揮官の期待に応える。6月11日の中日戦で6点リードの7回からプロ初登板を飾り、バットを2本折って凡打に仕留めるなど三者凡退の好投。直球は最速150キロをマークし、無失点に抑えると雄たけびをあげた。新庄監督はベンチの前まで柿木を出迎えると、両手でハイタッチして笑顔を浮かべていた。

「柿木はファームと見違えるような投球で正直、驚きました。新庄監督がこのパフォーマンスを引き出したと言えるでしょう。1軍でポジションを確約された選手がいないので、ファームの選手たちもモチベーションが高い。守備や走塁で目指す緻密な野球もチームに浸透し、選手同士で声を掛け合っている。楽しさと厳しさを前面に出す新庄監督は名将になる可能性を十分に秘めていると思います」(スポーツ紙記者)

 プロ11年目の松本剛がリーグトップの打率.358をマークするなど、新庄監督の起用法に年齢は関係ない。チャンスは平等に与えられる。それを生かせるかどうかは選手次第――。日本ハムは戦う集団に変貌しようとしている。(梅宮昌宗)