だが、増田さんによれば、重い物を運ぶ観点で見た場合、ランドセルは理にかなっているという。

「ランドセルは底がしっかりしているので、硬い面で荷物が支えられ、形状としては悪くありません。そのことよりも、学校への持ち物の取捨選択が必要で、中に入れる量があまりにも多ければ、腰が曲がり、腰痛の原因になってしまいます」

■体温調節一律おかしい

 高額という金銭的な問題はあるものの、荷物を運ぶ道具としては一級品。となると、自分で重さを考慮して、持ち帰る量を調節できるようにすることが大切になりそうだ。

 福岡県在住の中学生と高校生の母親(46)が疑問を抱くのは、下着に関する慣習だ。

 女性の子どもが通う学校では、体育の授業で体操服に着替える際、体操服の下にはなにも着ないようにというルールがあったという。都内在住で小学5年の女児を持つ母親も、同じルールが腑(ふ)に落ちない。

「汗をかいて下着がぬれた状態で服を着ると風邪をひくといった理由だと思いますが、学年が上がると女子は胸も気になります。娘に下着を着けたらと勧めても、『着ちゃいけないルールだから』とかたくなに拒む。おかしいですよ、やっぱり」

 前出の福岡の女性もこう疑問を呈す。

「冬寒くてもひざ掛けも使えない。体温調節に関することが一律で決められすぎている」

 一律の決まりがあれば管理はしやすくなる一方で、子どもが自分で考える力は削がれていく。下着を着るのを拒む女子児童のように、周りと違うことはいけないという刷り込みにもなる。

 本来は、こうした身の回りのことを考えることこそ思考力を養う練習になると話すのは、『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』の著者で慶應義塾大学などで講師を務める狩野みきさんだ。

「子どもの考える作業を阻む要素の一つが、“そういうものだから”と大人がルールを押しつけることです。下着を着るか着ないかについて言えば、目的は風邪をひかないことでしょう。ぬれた下着を着ないということならば、下着の替えを持っていくなど、別の案でも工夫できます。一律にしてしまうよりも、ゴールに向けてクリエイティブに頭を働かせるほうが、思考力をつけられます」

 昭和の管理型教育から抜け出さない限り、日本の子どもたちのクリエイティビティーを育てるのは難しい。学習もさることながら、生活面においての指導も変わらなければ、思考力豊かな子どもの育成は、指導要領の文言だけで終わってしまう。

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