撮影:チャーリィ古庄
撮影:チャーリィ古庄
この記事の写真をすべて見る

*   *   *
 ゴーッ。インタビュー中、ジェット機のエンジン音が近づいてくると、チャーリィさんのすぐ後ろを旅客機が通過した。

【チャーリィ古庄さんの作品はこちら】

 ここは成田空港の4000メートル滑走路北側にある小高い「成田市さくらの山」。週末になると、航空ファンだけでなく、乗りもの好きの家族連れでにぎわう。

 チャーリィさんが市から依頼され、丘に隣接する「空の駅さくら館」に「フライトショップ・チャーリイズ」を立ち上げたのは6年前。

 店内にはステッカーや写真集などのほか、旅客機のシートや計器、パイロットのかばんも置かれている。これらは実際に使用された本物という。チャーリィさんは黄色いトートバッグを手に取ると、こう説明した。

「元は救命胴衣なので、防水なうえ、めちゃくちゃ頑丈です。更新交換する際に破棄されるものなので、それを手に入れて作りました」

撮影:チャーリィ古庄
撮影:チャーリィ古庄

■成田空港に拠点を置く理由

 旅客機の撮影を専門とするチャーリィさんは、13年前、東京都世田谷区にあった事務所を成田市に移した。

「現場が遠いと撮影のチャンスを逃してしまいますから。例えば、カレンダーの写真の仕事をしていて、『これはいい青空だ』と思っても東京からだと時間がかかるじゃないですか。それで成田に引っ越してきました」

 首都圏には羽田空港もあるが、周囲が海なので季節感を出しづらいという。

「ここにだったら春はナノハナやサクラ、ツツジの花があるし、これからはアジサイが咲く。そういう季節を感じさせるものを入れて飛行機を撮れるんです」

 さらに、空港の近くに拠点を構えたことで、「ちょっと撮ってよ」と声をかけられることが増えたという。

「例えば、機内食を撮る仕事。成田空港の周辺には機内食をつくる工場が日本航空、全日空系以外にも5~6社あります。航空会社が成田に新規乗り入れをするとき、機内食のプレゼンが行われるんです。場合によっては本国からシェフがやってくる。私はその横でスタンバイして、シェフがこれに決めると言ったら、それを撮影したりします」

 ただ、最近はコロナ禍で新規就航がなくなり、機内食を撮る仕事も激減してしまった。それでも成田には地の利があるという。

「いま航空関連の会社はどこも厳しい。広報経費も圧縮されている。そんななか、成田空港を発着するLCC(格安航空)を利用できるのは強みですね。例えば、いきなり明日、福岡に行ってくれ、と言われても、LCCを使って6000円とかで、ぱっと飛べる」

 コロナ前は外資系エアラインの仕事が多かったという。

「例えば、大韓航空が成田-ホノルル線を就航した際のプロモーション撮影。あと、デルタ航空がエアバスA350を投入したとき、ポスターや社内資料用に本社のあるアトランタの空港で新機種を撮影したり。ほかにもアメリカン航空、ガルーダインドネシア航空、タイ国際航空、ニュージーランド航空とか、いろいろあります」

次のページ
操縦から事業認可申請まで何でもやった