あなたが口にしているシーフードは「海の奴隷」がとったものかもしれない。世界有数の水産大国・タイでは、漁船で奴隷労働をさせられている人々がいる。地獄のような日々から彼らを救おうとする活動家パティマ。本作はその航海を追ったドキュメンタリーだ──。連載「シネマ×SDGs」の9回目は、命がけのレスキューに同行し撮影したシャノン・サービス監督に話を聞いた。
![映画の場面 (c)Vulcan Productions, Inc. and Seahorse Productions, LLC.](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/5/d/840mw/img_5dec39a84b180001668c0fe7dfe36c6873794.jpg)
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本作のはじまりはミャンマーで「ここ20年ほどの間に、数十万人単位の少年や男性が消えている」という話を聞いたことです。
調査の過程で隣国タイ中部を拠点に活動するパティマ・タンプチャヤクルに出会いました。彼女は2004年に夫と労働権利推進ネットワーク(LPN)を立ち上げ、そこにタイの漁船から逃れた男性が助けを求めてきたのです。私たちは彼女の命がけのレスキューに同行し、撮影をはじめました。 漁船で働く奴隷の多くは、ある日突然連れ去られ、知らぬ間に船に乗せられます。映画に登場するトゥン・リンはミャンマーで生まれ、14歳で誘拐されて1日20時間も働かされていました。仕事中に4本の指を失う大けがをしても船から逃れられず、決死の覚悟で海に飛び込み、インドネシアの島にいたところをパティマに救出されました。彼女はこれまでに約5千人を救出し、この問題が世界に報道されるきっかけとなりました。 彼女は愛する息子の元に戻ることもできないほど危険な状況で活動しています。勇気の源は若い頃にがんを患った経験だと思います。人生で何をすべきかを悟り、苦しんでいる人のために働くことを選んだのです。まさにヒーローですが、実際の彼女はとても物静かで謙虚な人です。映画を観(み)て「自分がこんなに登場しているなんて!」と驚いていました(笑)。 タイでは漁船の監視などが強化され、状況はだいぶ改善されてきつつあります。我々にもできることはあります。まずはLPNへの寄付。さらに自分が食べる魚がどういうルートでやってきたのか、この魚をとった人たちが適正な賃金をもらっているのかを考えることです。一人一人の行動が大きな変化につながる。パティマはまさに、その象徴だと思います。(取材/文・中村千晶)
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![シャノン・サービス監督(Shannon Service)/1975年生まれ。ニューヨーク・タイムズやBBCに作品を提供する独立系リポーター、映像作家。共同監督として携わった本作は初のドキュメンタリー。全国順次公開中](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/0/0/595mw/img_0084d54d9a6fe9f73fa5ba105e393e2e38961.jpg)
※AERA 2022年6月20日号
![](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/4/d/120m/img_4dada8ca82728cf041e1cacfa35d301b238733.jpg)