リノベーションやシェアリングエコノミーなど「所有からシェア」への消費行動の変化を、マーケティング・アナリストの三浦展さんは「第四の消費」と名付けた。6月、三浦さんは近い将来訪れる「第五の消費」を見据えて、「次の時代の日本人がどんな豊かさを求めて、どんな生活をするかを考える」ヒントとなる『永続孤独社会――分断か、つながりか?』(朝日新書)を出版した。同書刊行を前に行われたスペシャル座談会では、生活道具を扱うRoundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏と、国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏とともに、社会の消費活動の変遷とカルチャーの関係を中心に、来るべき「未来」を語り合った。
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■「拾う」「もらう」「借りる」が暮らしの基本に?
小林:先ほどの話(「前編」を参照)に絡めて言うと、派手な装飾や技巧から距離を置き、日用に根ざした簡素な器を指向する「生活工芸」が勃興したのも2000年代前半です。近年、それを定義づける機運が高まっていて、雑誌『工芸青花』編集長の菅野康晴さんは、「現代日本のバブル経済崩壊後に、もてる者たちが起動させた、もたざる者たちによる、もたざる者たちのための生活文化」と定義しています。「『もてる/もたざる』は経済にかぎらず、人脈、権威、技術、地盤、経験、権利等々」であると。
河尻:その定義を広く解釈すると、「無印良品」もそこに入ってくるかもしれない。バブル前ではあるけれど、もてる者、つまりセゾングループという大企業主導で立ち上がったシンプル志向のブランドであり、生活文化的な動きでもあるという意味で。
小林:ええ。それで思い出したのが、三浦さんが『無印ニッポン』で書かれていた「消費者主権」。つまりここまでは用意します、あとはあなたご自身が自分で好きなように使ってくださいという。自分流にものをアレンジする“余白”があるということですよね。
三浦:「無印良品とは“半製品”である」というのは、『月刊アクロス』の1984年2月号の特集「無印良品徹底研究」で、すでに書いたことなんです。