持続化給付金をめぐる詐欺の横行が明らかになった。自主返還申し出が2万件を超え、すでに返還されただけで約166億円。検挙された者も3700人を超え、うち20代以下の若者が2500人にのぼるという。
厳しくチェックすべきだったという声も聞かれるが、性善説を前提に簡易な審査で給付しようとした政府の姿勢自体は間違いではなった。深刻な状況にある事業者に一刻も早く支援金を給付する必要があったからだ。
だが、問題がなかったわけではない。そこで、事態の深刻化の原因を7つにまとめてみた。
第1に、事務局体制があまりにお粗末だったこと。経産省が「電通」に委託していることを隠すために作ったとも言われるサービスデザイン推進協議会というトンネル団体に作業を委託し、そこから電通に丸投げ。さらに再委託が行われた。金儲けが優先で、不正の横行など気にも留めなかったのだろう。
第2が、経産省のメンツを守ろうとしたこと。当時、海外との比較で、政府はデジタル化の遅れを厳しく批判されていた。デジタル化の旗振り役の経産省としては、汚名返上のために、ムリして早く給付しようということになった。
第3の原因が、経産省の天下り利権が絡んだこと。自らが所管する大事な天下り先の商工会議所や商工会などの中小企業団体に恩を売るために、早期給付が必要だった。
第4が、経産省と族議員の関係。中小・零細企業は自民党の大切な票田だ。いかにも怪しげな個人事業主の申請でも下手に詮索して給付の遅れになって、自民党にクレームを入れられると経産省の役人が怒られるということを怖れた。
第5が、官僚の体質の問題。不正によって税金が無駄になっても、自分の懐が痛まないから官僚は無頓着だ。さらに、発覚しても、担当者は1年程度で他の部署に移っていて、責任も問われない。
第6が、役所の縦割りの問題。本来は、税務署が申請受付から審査に責任を持てば、最も効率的で厳正なチェックができたはずだ。しかし、経産省が担当なのでその発想が出てこない。その結果、偽造書類に税務署が審査もせずにハンコを押すなどということまで起きる無責任体制になってしまった。