同31分の失点も、相手が蹴り込んできたロングボールの処理をめぐって、吉田とDF板倉滉(こう、25)、GKシュミット・ダニエル(30)が一瞬譲り合って生まれた隙を突かれてのものだった。
自陣ゴール前でPKを与えてしまうかもしれないスライディングタックルをしたり、ボールを「お見合い」したり。真剣勝負の場では、およそ見られないであろうお粗末なミスだった。
日本サッカー協会の関係者は、6日のブラジル戦(東京・国立競技場)を引き合いに出して指摘した。
「ブラジル戦のようなモチベーションや集中力は、正直感じられなかった。ある意味、メンタル面でまだまだ未熟だと言うこともできるが、絶対に負けられない試合ではああいう緩慢なプレーは出ないと思う。あくまで、テストマッチだった」
そこで強調したのは、「監督にとっても」という点だ。
森保監督は「負けてよし、ということは、代表戦ではあり得ないと自分もいつも思って試合に臨んでいる」と言う。ただ、その采配はW杯のアジア最終予選とは明らかに違っていた。
21年9月の初戦、ホーム・オマーン戦(パナスタ)で敗れ、3戦目までに2敗と過去最悪の展開だった。そこから立て直し、最終予選で最長となる6連勝で、7大会連続7回目のW杯出場をつかみ取った。
■強化試合はテストの場
連勝の始まりとなった第4戦のホーム・オーストラリア戦(埼玉スタジアム)。負ければW杯自動出場圏内のグループ2位が遠のく一戦で、森保監督はフォーメーション(人の配置)とスタメンを大胆に変えた。これがV字回復のきっかけに。それ以降、ケガ人などを除いて先発はいじらなかった。
「メンバーが固定されている」
よく上がる森保批判の一つの原因が、それだ。
コロナ禍の影響で、W杯予選は期間が短縮。通例なら、予選の途中に組み込める親善試合ができなかった。何かを試す場が森保監督にはなかった。
だから、6月の強化試合4連戦はテストの場だった。毎回、前の試合から先発を8~9人も入れ替え。森保監督は「人を試す」と表現した。この選手とこの選手を組み合わせたら、どうなるか。ポジションを変えて使ったら、どんなプレーをするか。毎試合、試行錯誤していた。(朝日新聞スポーツ部・勝見壮史)
※AERA 2022年6月27日号より抜粋