「近年は透析患者が高齢化し、通院がままならなくなって、病院に搬送される患者さんが珍しくなくなりました。透析クリニックに自力で通うことができなくなり、透析施設のある療養施設に入る人も増えているのです」
と言うのは、日本赤十字社医療センター腎臓内科の山田将平医師だ。
さらに、人工透析を受けている人はサルコペニアになりやすいことが明らかになっていると言う。サルコペニアは筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態をさす。歩くのが遅く横断歩道を青信号の間に渡り切れない、ペットボトルのふたを開けるのが大変……などが典型的な状態で、転倒や寝たきりの原因になる。
疫学調査によればある地域の日本人の一般高齢者949人(平均73.2歳)のうち、サルコペニアと診断されたのは7.9%。他の複数の研究でもほぼ同じ数となっている。
「血液透析患者の研究データでは同規模の調査ではないものの、高齢の血液透析患者(平均76.5歳、20人)を対象とした研究で55%(11人)がサルコぺニアという結果が得られており、その差は大きいのです」
透析患者がサルコペニアになりやすい理由はいくつかある。透析で血液から老廃物を除去する際、たんぱく質の材料であるアミノ酸も取り除かれてしまう。1回の血液透析で6~13グラム(腹膜透析では2~4グラム)が失われることがわかっている。
「もう一つは運動不足。実は腎臓病の人は安静が大事、と言われていた時代が長らくありました。そのイメージのまま、運動をしてはいけないと思っている人が多い。また、運動をすすめても、『透析に来るだけで大変』『そんな時間はないよ』と言われてしまうこともよくあります」
しかし、前述のように、透析患者はサルコペニアになりやすいことは事実。さらに、注意したいのは、サルコペニアを合併している透析患者は合併していない患者の3倍、死亡リスクが高いという研究報告があることだ。