若年層に人気のスマホアプリ「Zenly(ゼンリー)」。自身の情報だけでなく、フォローするユーザーの居場所や滞在時間などをリアルタイムに可視化してくれる。「何でもかんでも共有すればいいってもんじゃない」と考える大人たちをよそに、若者たちの“つながり”は進化しているようだ。AERA 2022年6月27日号の記事から。
【漫画】若者と大人はまるで理解しあえない? 「つながり」世代で深い“溝”
※記事前編<<「相手が就寝中かどうかもわかる」 居場所から滞在時間、バッテリー残量まで公開しあう若者の心理>>から
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つながり続けることに目を奪われがちなゼンリーだが、そもそも「つながりたい」欲求は昔からネットにあふれていた。
ネット掲示板「2ちゃんねる」では、2001年頃からテレビの感想などをリアルタイムで書き込む「実況板」が大盛況。その後、つぶやきの場はツイッターへと移行し、10年には「〇〇なう」が新語・流行語大賞のトップ10に躍り出た。さらに、昨春には音声SNS「クラブハウス」が話題を呼び、三次元の仮想空間「メタバース」も熱視線を集めている。形は違えど、これらの共通項こそつながりだ。
ネットとリアルも一緒
電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬さんは、インターネットのあり方に変化が起きていると指摘する。
「もともとインターネットは、お互いのペースを保ってコミュニケーションを取れるという非同期的なところから出発しています。ただ、最近流行しているのは、ライブ配信サービスやメタバースなど同期系サービスがほとんどです」
物理的に顔を合わせることが真のコミュニケーションで、オンラインは従属的なもの──そんな価値観が主流だったが、若い世代を中心にネットとリアルの序列がなくなっているという。
「一緒にいることとネットでつながること、どちらも共通の思い出が作れて、お互いを知ることができるというのがZ世代の感覚です。道具的、非同期的だったネットのあり方が変わりつつあります」(天野さん)
米調査会社data.aiが発表した「モバイル市場年鑑2022」によると、ゼンリーは昨年日本国内で8番目にダウンロードされている。とりわけ、Z世代と呼ばれる10代中盤から25歳頃までの年代の利用率が高い。
「察する」文化とマッチ
「日本は、このアプリの最大の市場です」
そう言い切るのは、ゼンリー広報担当者だ。「家族の見守り」を目的に15年にフランスで生まれたゼンリーは、ほぼ同時期に日本語版がリリースされた。すると、瞬く間に人気に。
「日本独自の『察する』文化とうまくマッチしたのだと思います。ゼンリーを使えば、友達がどこで何をしているのかがわかるため、その時々の最適なコミュニケーションを取ることができるからです」(同社広報)