
人間は1日に約2万回もの瞬きをする。瞬きやまぶたへのなんらかの断続的な刺激によっても、挙筋腱膜は劣化してしまう。上眼瞼挙筋自体は正常である場合が多いという。
「断続的なまぶたへの刺激」でとくに問題になるのはコンタクトレンズだという。長期装用している場合に眼瞼下垂のリスクが高まる。コンタクトレンズがまぶたの裏側の筋肉に触れて刺激を与え、着脱時にはまぶたを引っ張り上げてしまうためだ。
20年以上のコンタクトレンズの使用で発症する危険性が高まるという。ハードコンタクトレンズで17倍、ソフトなら8倍、非装用者と比較して発症リスクが高いという研究結果もある。
「コンタクトレンズを10代から使っている場合、早い人では35歳ぐらいで症状が出る人もいます。まぶたをこする癖のある人や一重まぶたの人にも多い傾向があります」(松田医師)
このほか、白内障などの目の手術歴のある人もリスクが高まるという。手術の際、目を大きく開ける器具を使うためだ。緑内障でよく使われるプロスタグランジン系の眼圧下降薬も眼瞼下垂のリスクになるという。
眼瞼下垂になっていても自覚のない人も多い。まぶたが下がっていても、初期のうちは、あごを上げたり、眉を上げたりすればある程度見えてしまうためだ。
まぶたが下がってきたサインとして、40代なのに額にシワが増えてきた、二重まぶたの二重の幅が広くなってきた、という症状がよくみられるという。
「眼底検査時に、まぶたを持ち上げられずにテープを貼られるなどして初めて気づく人もいます」(柿崎医師)
症状が進行して、さらにまぶたが下がってくると、正面を見た状態で上まぶたが瞳孔にかかってくる。重症度の診断は上まぶたの縁から瞳孔中央(黒目の中央)までの距離で判断される。この距離が3・5ミリ未満になってきた場合に眼瞼下垂と診断される。
眼瞼下垂に似た病気に、まぶたの皮膚が伸びたことで視界が遮られる「眼瞼皮膚弛緩症」もある。これは腱膜にはとくに異常はみられないため、眼瞼下垂とは区別される。