2009年、同社は警視庁などの要請に応じるかたちで痴漢犯罪が多発していた埼京線の車両で防犯カメラの試験運用を開始。やがて首都圏全体に広がった。その動きに関東を中心とする私鉄各社が追従した。
つまり、通勤車両の防犯カメラは、痴漢被害や痴漢冤罪被害、車内暴力などを抑止するともに、その行為を記録し、事後の処理に活用するために設けられてきた。そのため、車内防犯カメラの多くが「録画専用」となっている。
一部ではあるが、運転台で防犯カメラの映像を確認できる車両もある。JR東日本が山手線や横須賀・総武快速線に投入した最新型のE235系電車もその1つ。しかし、その防犯カメラの用途も「録画が基本」と、JR東日本は言う。
■東急電鉄はリアルタイムでモニター
一方、他社の通勤車両とは異なり、車内防犯カメラのリアルタイム映像を運輸指令所でモニターしているのが東急電鉄だ。映像はソフトバンクの通信回線を利用して送る仕組みで、同社は20年7月に全車両への防犯カメラの設置を完了した(こどもの国線を除く)。
ただし、運転手や車掌など、乗務員は車内防犯カメラの映像を見ることができない。
「乗客のみなさまのプライバシー保護の観点から映像を見られるのは運輸指令所と、権限を持っている本社の人間の一部だけです」(東急電鉄)
ちなみに、防犯カメラで撮影した乗客のプライバシー保護については、東急電鉄だけでなく、鉄道各社は非常に気を使っている。
では、東急電鉄車内で異変が起こった場合、どう対応するのか?
「お客様から乗務員に『何号車で何かあった』という通報があれば、それを車掌が指令所に連絡して、画像を確認してもらい、状況を車掌や運転手に伝える、という流れになると思います」
■関西でも設置が本格化
関東の鉄道各社では防犯カメラの設置が着実に進んでいるが、関西の鉄道会社はどうだろうか。JR西日本の車両における防犯カメラの設置率は昨年末時点で、新幹線83%、在来線特急2.5%、在来線普通列車0.1%。
「今後、在来線列車については、特急や京阪神エリアを走行する新快速などの停車する駅の間隔が長い列車を優先して防犯カメラを整備していく予定です」(JR西日本)