28年ぶりに完全試合を達成したロッテの佐々木朗希投手
28年ぶりに完全試合を達成したロッテの佐々木朗希投手

「抗力係数はボールの形と表面に関係がある。ボールの縫い目が大きな役割を果たしており、一般的に、縫い目が高くなると抗力も強くなります。抗力係数はボールが投げられてからホームプレートに来るまでに失われたスピードの量を知ることで決めることができます」

 縫い目が違うと、いったいどのくらい影響するのか。先の宮下さんはこう補足する。

「アメリカでの調査では、縫い目の高さが0.1ミリ違うだけで、飛距離が2~3メートル短くなることがわかっています。実は、縫い目のわずかな変化がそのくらいセンシティブ(敏感)なものだとわかり、多くの人が驚きました。ボールの縫い目の高さなどはNPBの規定で決められていますが、縫い目の高さを0.1ミリ単位で管理するのは難しい。日本では反発係数に目がいっていますが、縫い目の高さなど抗力係数が影響している可能性も考えておいたほうがいいと思います」

 さらに、ボールの形状そのもの以外に注目されている要因がある。それは、投手の技術力の向上だ。

 投球の軌道や回転数などが分析できる「トラックマン」などが活用され、投手の技術力は大きく進化している。元メジャーリーガーの上原浩治氏もYahoo!ニュースのコラムで「投高打低」の原因について「投手の技術の進化が影響した一面もあるだろう」と指摘している。

 スポーツの空気力学に詳しい茨城大の坪井一洋教授は、公式球の空気抵抗に変化はなく、投手の技術力が向上していることを前提に、「ボールの回転数が増えていることが要因にあるのでは」と仮説を述べる。

 坪井教授が独自に行ったシミュレーションの結果はこうだ。

 時速144キロの球速で、毎秒30回転するボールと、毎秒35回転するボールが打たれたときの飛距離を計算すると、およそ28度の角度で打ち出されたボールが最もよく飛び、毎秒30回転で133メートル、35回転で136メートルだった。ところが、23度の角度で打ち出されたときは、それぞれの飛距離は130メートルと124メートルという結果となった(図参照)。

暮らしとモノ班 for promotion
「昭和レトロ」に続いて熱視線!「平成レトロ」ってなに?「昭和レトロ」との違いは?
次のページ
ボールの「回転数」が上がっている