膵臓(すいぞう)がんの患者支援団体、NPO法人パンキャンジャパン理事長の眞島喜幸さんも「希少がんの問題はなかなか改善が進みません」と訴える。
眞島さんは、膵臓がんをはじめ、難治性のがんや希少がんのドラッグラグ解消に取り組んできた。妹を膵臓がんで亡くし、自身も膵腫瘍の全摘手術を受けた経験がある。米国で新薬が承認されるたび、厚生労働省に早期承認を求める要望書を出している。
「15年に出した、膵神経内分泌腫瘍と呼ばれる膵臓の希少がんに関する要望はようやくかない、21年8月には放射性物質を使った『ペプチド受容体核医学内用療法』が保険の適用になりました。それでも道半ば。この薬は長期の保存がきかず、世界でも作れる工場は限られる。複数の供給源ができるようにならないと不安な状況は続きます」(眞島さん)
保険適用までは1カ月あたり数百万円かかり、必要な治療期間を考えると1千万円を超す計算だったという。治療のため欧州に行かざるを得ない患者も少なくなかった。昨年は患者のがん組織に起きている遺伝子の変化をまとめて検査し、効きそうな薬を探す「がん遺伝子パネル検査」に関する要望を出した。
「米国などでは必要なタイミングで検査が受けられるのに、日本で保険適用が受けられるのは標準治療がなかったり、標準治療を終えたりした固形がんの患者に限られます。転移性の膵臓がんはステージIVで5年後の生存率は1%台。標準治療を終えた後にこの検査を受け、効きそうな薬が見つかっても遅すぎます」(同)
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(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2022年7月1日号より抜粋