Z世代を対象としたシンクタンク「Z総研」の道満(どうまん)綾香さん(30)は干物女という考え方が支持された理由をこう考える。

YouTubeチャンネル「エミリンチャンネル」でリアルな干物女の日常を発信するエミリンさん(動画のキャプチャ画像)

「職場でも家庭でも女らしく完璧でいることが求められてきましたが、干物女を描いた作品のヒットで、『現実のままでいいんだ』と思ったのでは」

 当初は「干物女はモテない」などと卑下する向きも一部あったが、変わっていった。

「働き方改革や、多様な生き方を認め合おうという社会の変化が背景にあって、干物女が普通になっていったと思います」

 横浜市の女性(38)は6年前、干物女になった。

「休日も、いつ誰に会っても大丈夫なように化粧をして、ヒールのある靴を履いていました」

■リアルこそ正義の感覚

 変わったきっかけは、職場のリモートワークの導入だ。

「出社していた頃は延々と働いていましたが、自宅で仕事をする日が増えてきて、仕事の時間を決めてメリハリをつけるようになりました。そうしたら仕事をしていない時間はそんなに気を使わなくてもいいんじゃないかという気持ちになって。堕落したわけではないです。しっかり休んで、しっかり働こうって」

 仕事の後は、使い古しのパジャマに派手な柄のお気に入りTシャツに着替える。休日に予定がなければすっぴんで過ごす。

「趣味に没頭する時間が増えてから、価値観が変わって、大衆受けが気にならなくなりました」

 前出の道満さんは「『〇〇女』とラベリングする呼び方は、選択肢が多様化した今の時代にそぐわなくなった」としつつ、干物女のような生き方は、今も若者に支持されていると考える。それを後押ししたのはSNSだ。

「インスタグラムで盛った自分の写真を投稿する一方、24時間で消えるストーリーズという機能で、すっぴんからキレイになるリアルな過程をみせることも。キラキラ要素と泥臭さ、弱さを兼ね備えた『素』をオープンにして、共感を集めています」

 博報堂若者研究所の瀧崎(たきざき)絵里香さん(30)もこう話す。

「作りこまれたものでなく、リアルこそ正義という感覚があります。干物女という言葉を知らなくても、『家ではだらしない一面があってもそれも魅力だね』という価値観は既に定着し、コロナ禍に加速したと思います」

 背景にあるのはテレワークだ。

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