初代iPhoneでのYouTubeアプリのアイコンは、テレビを彷彿とさせるデザインだった。この間にテレビを凌駕するほどの存在にまで成長。大きな変革をもたらした(gettyimages)
初代iPhoneでのYouTubeアプリのアイコンは、テレビを彷彿とさせるデザインだった。この間にテレビを凌駕するほどの存在にまで成長。大きな変革をもたらした(gettyimages)

 テレビ本体は、装置産業として東芝、パナソニック、ソニーなど国内企業を育て、日本経済と一体となって発展してきた、と樋口さんは指摘する。一方、YouTubeは、プラットフォームも再生装置の大部分も、国外企業のものである。収穫逓増の状態が引き起こす富の偏在や、適正な利益分配に関する議論があることも忘れてはならない。

クリックはただなのか

 経済的な側面に関しては、英調査会社オックスフォード・エコノミクスが発表したレポートがある。それによると、20年にYouTubeが日本のGDPにもたらした経済効果は約2390億円。広告による収益のほか、有料のチャンネルメンバーシップやスーパーチャット(視聴者からの投げ銭)、音楽などに払われるロイヤルティーなど、コンテンツ所有者の収益=直接的な経済効果のほか、映像編集・制作などのサプライチェーンで発生する間接的な経済効果、さらにオリジナルグッズの売り上げ、ブランドとの提携、ライブ公演など、YouTube以外での収益=触媒的な経済効果を総計したものだ。

 樋口さんは、こう指摘する。

「クリックすれば無料で見られる、と思っている人が多いけれども、そのクリックは決して“タダ”ではない。お金を与えているわけです。どんな収益を生み出し、それがどこに流れているのかを自覚することも大切です」

(編集部・高橋有紀)

※AERA 2022年6月27日号より抜粋

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