お笑いトリオ、ロバートの馬場裕之の料理チャンネル(登録者数77万人)、車やバイクの愛車紹介などをするお笑い芸人ヒロミのチャンネル(同116万人)は、本人が本当に「好きなこと」をしているからこそ、視聴者がついていると分析する。
そうした傾向には、そもそものYouTubeというメディアの特性も関係しているかもしれない。映像制作やメディア史に詳しい樋口喜昭教授(東海大学文化社会学部)が説明する。
「従来のマスメディアは大きなステージのようなもの。舞台の上からこちらを向いているイメージ。YouTubeはもともと通信のメディアなので1対1の関係がある。多くの人が見てはいるんだけど、自分に語りかけているように錯覚する仕組み。カメラの距離感も、遠くから撮るのとは違い、見る側は距離の近さを感じます」
社会的義務どう果たす
近年はネット動画の視聴状況も多様化している。
たとえば「コネクテッドTV(CTV)」というインターネットに接続できるテレビの登場により、家庭のテレビなどでのネット動画の視聴も増えている。電通メディアイノベーションラボの調査によれば、CTV利用者は2019年に32.7%だったが21年に39.4%と増加。さらに調査時から過去1カ月以内にテレビで利用したネット動画サービスを尋ねる設問では、個別サービスにおいてYouTubeの利用率が最も高い結果となった。
「大きいモニターで見るようになれば、質の高い動画へのニーズも増えます。初めは誰しもが発信者になれるのがYouTubeの面白さでしたが、(動画制作の)能力差があり見る側も時間が限られている。質の高い一部のものが選ばれ見られるようになる流れがあると感じます」(東海大学文化社会学部の樋口喜昭教授)
テレビとの比較という点では、他にこんな視点もある。
「世界的な動きとしてSNS全般に公共性の問題が出てきています。これだけの人が使うようになり影響力が大きくなれば、社会的な義務を果たさないといけない。かつてはテレビがそういう状況でした。放送局が電波という資産を使うことが許されたのは公共性があるからだし、番組審議会やBPO(放送倫理・番組向上機構)などの組織もある。難しい問題ですが、YouTubeに公共性を求める向きは強まっていくでしょう」(同)