参院選が公示され選挙戦がスタート。投開票は7月10日。物価高、経済格差、ウクライナ侵攻、環境問題……。課題は山積なのに、驚くほど盛り上がっていない。だが、私たちは肝に銘じなければならない。この一票が私たちの生活を左右するのだと。今回の参院選は何を争点として考えればいいのか。AERA 2022年7月4日号は、政治学者の中島岳志さんに聞いた。
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注目したい課題は二つあります。ひとつは、コロナの後の世界をどう考えるか。僕が不思議なのはみんな「やっとコロナ前に戻れる」と思っていること。コロナ前に問題があったからこうなったのを忘れています。
ウイルスの問題は環境破壊と連動していると言われています。森林を切り開き、野生動物の生息場所が限定され人間や家畜との接触の機会が増えて、さまざまなウイルスが人間に「引っ越し」した──コロナはその一環なわけです。コロナが収束しても、いろんなウイルスが人間に襲ってくる時代だと思うんです。早急に環境問題や気候変動に世界中で取り組まないと、ロックダウンし続ける世界を生きていくことになります。参議院選では、ここを自民党に問いかけないといけないはずなのに、掲げているのは、れいわ新選組など限定的です。本来、野党第1党が全面的にやらないといけないと思うのですが……。
もう一つはウクライナ問題。外交は、相手との関係を切ってしまえば、そこで終わりです。岸田内閣の大失敗は、プーチンの資産凍結までしてロシアとの関係を切ってしまったこと。ロシアを追い込めば追い込むほど中国と関係を深めるわけで、日本の外交上の安全のリスクは高まります。ロシアとのパイプは残しながらカードを切っていかないといけないのに、全部切ってしまっているのです。