数年がかりで92作を読了した今、小説は好きなように書けばいいと背中を押されたような気がするという。どの作家もそれぞれのスタイルで書いていて定石などないことがわかったからだ。

「さすがにこれだけ読むと人間の普遍性みたいなものがわかってきますね。どの時代でも人間は同じことを考えているから、小説を書くときに同時代性は気にしなくていいと気が楽になりました」

 しかも小説にはあらゆる人物が登場する。好きなように生きたらいいというメッセージも受け取った。既に重版になった本書。津村さんの本音が文学の扉を開いてくれる。(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2022年7月29日号