クマ以上に注意するべき危険生物は、スズメバチだ。毎年10~20人がハチに刺されて死亡している。山地ではオオスズメバチとクロスズメバチに要注意。木の洞や地中など隠れたところに巣をつくることが多い。気づかないうちに巣を刺激し、襲われることがある。キイロスズメバチやコガタスズメバチは住宅地に生息し、民家の軒下や庭木の中に巣をつくる。西海氏が対処法を語る。
「まずは山道や林道を外れて茂みの中には入らないことです。そこに巣がある可能性も否定できません。ハチが近寄ってきても、手で振り払うなど大きな動きをしてはいけない。ハチを刺激しないよう静かにその場を離れましょう。ハチはにおいに敏感なので、食べ物やジュースの甘いにおいに反応して寄ってきます。人の肌に止まって汗をなめることもありますが、じっと耐えていれば基本的に大丈夫です」
スズメバチに刺されると、激痛とともに皮膚が赤く腫れあがる。速やかに流水で傷口を絞り洗いし、抗ヒスタミン軟膏(なんこう)を塗る。
怖いのはアナフィラキシーショックだ。ハチの毒によって血圧低下、呼吸困難などの全身症状が起きて重症化することがある。西海氏が語る。
「めまいや発疹、息苦しいなどの症状が出たら、病院に行くべきです。2回以降の刺傷が危ないといわれていますが、初めて刺された人でも発症することがあります」
ハチは相手を敵と見なすと、大群で襲ってくる。2019年10月、和歌山県日高町の山中で男性がハチに刺され、多臓器不全で死亡した。全身に100カ所ほど刺された傷があったという。西海氏がこう指摘する。
「スズメバチは、フェロモンというにおい物質を使って仲間とコミュニケーションを取っています。巣が刺激された際は、『警報フェロモン』を使って仲間に危険を伝え、集団で敵に襲いかかる攻撃態勢を取ります」
こうなると、じっとしていても刺されるので、とにかく一目散に逃げるしかない。