AERA 2022年1月23日号より
AERA 2022年1月23日号より

 本番は4回転サルコーが2回転になり、続く4回転フリップで転倒。大きなミスが続いてもそれを予想範囲と捉え、後半の4回転2本をきっちり決めた。

「試合は、練習してきたことができないことがあるもの。焦りはありませんでした」

 その上で「練習のための試合、試合のための練習」についての持論を展開する。

「僕は一つの試合にかける思いを本当に強くやってきたから、こういう状況はこうなるよね、というのが最近は分かってきたと思います。失敗も良い経験になると分かってから、スケートが苦しくなくなりました」

 連覇がかかる3月の世界選手権に向けての思いも語った。

「今のコンディションでこの数カ月レベルアップすれば、十分に優勝を狙える位置にいます。ただ、昔から順位を残したいという意思でスケートをしてはいない。連覇を期待されているし、連覇できるような練習をしていくけれど、試合になったら、自分が何をやり残し、表現したいのかを追求していきたいです」

 ステファン・ランビエルコーチも自信を見せた。

「昌磨は世界王者となっても、次のモチベーションを高めています。彼のパワーの源は挑戦心。まだまだ成長します」

 世界選手権の代表は、シーズン前半の成績も加味した選考基準によって決定。男子は全日本選手権2位の島田高志郎(21)が外れ、宇野が疑問を呈したことで世論が沸いた。五輪の代表選考は全日本選手権の結果を重視していたため「全日本での一発勝負」という印象を与え、それが選手やファンの心理に影響していたのだ。日本スケート連盟にとって「選考で重視する項目の明確化」という課題が明示された大会となった。

(ライター・野口美恵)

AERA 2023年1月23日号より抜粋