──新ドリトル先生は、単なる冒険物語ではなく、ネズミの恋の話から繁殖の話へ、さらには結婚観に至るまで登場します。児童書としてはあまり類をみないかもしれません。

 ドリトル先生は独身ですし、原作ではそういった話などはいっさい出てこないのですが、生命を考えるうえでまったく触れないというのもよくないなと思いました。実際に、ダーウィンは結婚すべきかどうか悩んで、結婚の利点と難点をリストにしていたんですよ(笑)。

■タテマエ論を排して

 科学的な裏付けを得ながらも理想の科学者としてのドリトル先生を伝えたいと思ったわけです。ドリトル先生は動物たちを愛していますが、身近にはブタの「ガブガブ」も登場します。なのに、ドリトル先生の大好物はベーコンなんです。動物が好きだから、動物がかわいそうだから、菜食主義だという人もいますが、植物にも命はあるわけです。なのでタテマエ論はなるべく排しながら、生命のありのままの姿を書きたいなとも思ったのです。

 今は大人も子どもも読む文章は140字くらいの短文ばかりなので、本書を少し長めの文章を読むとっかかりにして、自然や生命のことを考えるきっかけにしてもらえるといいですね。

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2022年7月18日号

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