動物と話せる医者・ドリトルと動物たちによる冒険を描いた児童文学の名作「ドリトル先生」シリーズ。このキャラクターを土台にした小説、『新ドリトル先生物語 ドリトル先生 ガラパゴスを救う』を執筆したのが、生物学者の福岡伸一さんだ。今の子どもたちに伝えたい思いを、福岡ハカセに聞いた。

MENU ■ドリトル先生は子どもを「子ども扱いしない」 ■勉強がなんでもかんでも好きである必要はない ■夢がない人はたくさんいるし、それでいい

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―――福岡さんは、2020年にガラパゴス諸島を訪れ、そこで体験した魅力が詰まった小説を執筆されました。子どもたちに物語をどんなふうに楽しんでもらいたいですか。

 ドリトル先生シリーズは、私にとって読書のきっかけを作ってくれた物語で、とても愛着のあるものです。そこでドリトル先生の世界という舞台をお借りして、私がガラパゴスで感じたことやさまざまな思いを入れこみ、新しい物語を完成させました。

 子どもにとっては難しすぎる部分もあるけれど、あえて難しいままにしたところが多々あります。というのも、少年少女が読む本は、いつもちょっと背伸びして読んでほしいと思っているからです。ところどころに読めない漢字や難しい表現などが出てくると思いますが、そういった言葉が小石のように胸の中に残って、それがいつか再発見や気づきにつながるという教育的な効果もあると思っています。

 ぜひ、この本で初めて出合う言葉も大事にしてほしいですね。また、今は大人も子どもも長い文章を読む機会が減ってきているので、本書をきっかけに自然や生命のことを考えてもらえたらと思います。

■ドリトル先生は子どもを「子ども扱いしない」

―――本家「ドリトル先生」シリーズにも登場する10歳の少年・スタビンズくんを通じて、一緒に学んだり、ワクワクしたりできるのも魅力ですね。

 ヒュー・ロフティングが書いたオリジナル版のドリトル先生は12巻あって、2作目の『ドリトル先生航海記』からはスタビンズくんという少年が登場し、彼の目線で物語が進んでいきます。それによって、少年少女にとっては物語がより身近なモノになります。ドリトル先生もすばらしいけど、少年少女たちはスタビンズくんにより感情移入して、「私もこんなふうになりたい」と思うようになります。

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吉田美穂
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