地球上でここにしか見られない生き物が生存する、ガラパゴス諸島。南米エクアドル領の、赤道直下に並ぶ火山群島で、ユネスコの世界自然遺産第1号に登録されている。この地を2020年3月に初めて訪れたのが、生物学者の福岡伸一さんだ。そのときの体験を織り込んだ初めての本格小説『新ドリトル先生物語 ドリトル先生ガラパゴスを救う』(朝日新聞出版)も刊行した福岡さんに、子どものころから抱いていたガラパゴスへの思いや、現地での驚きの体験を聞いた。

MENU ■人が道をよけてゾウガメが通り過ぎるのを待つ ■限られた資源を奪い合わない ■島だけでなく、海もきれい

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 小学生のころから世界地図を見るのが好きで、大陸から離れた孤島を見つけては、行ってみたいなと思っていました。

 ガラパゴスという島の名前を聞いたのは、ガラパゴスゾウガメを知ったときです。世界最大のリクガメで体長1m超に成長し、200年近くも生きるというすごい生物にとても興味を持ちました。

ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)
ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)
ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)
ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)
ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)
ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)

 また中学生のころにチャールズ・ダーウィンの存在を知りました。彼は1835年にガラパゴスを探検し、そこで見聞きしたことが後の「進化論」の着想につながったといいます。私もダーウィンみたいな生物学者になりたいと思っていたので、ガラパゴスは自然と「いつか行ってみたい場所」になっていました。もちろん観光としてならいつでも行けたでしょう。しかし、私のぜいたくな夢は「ダーウィンが通ったのと同じ航路でガラパゴスを旅したい」というものでした。2020年3月についに念願の旅が実現しました。

ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)
ガラパゴス諸島に生息する動物たち(写真/iStock)

■人が道をよけてゾウガメが通り過ぎるのを待つ

 訪れてみて一番驚いたのは、ガラパゴスの不思議な生き物たちは、人間のことをまったく恐れないということです。

 私たちの周りにいる野生動物は人間が近づくと逃げてしまうし、スズメやカラス、ハトも遠ざかってしまいますよね。ところがガラパゴスゾウガメは人間がいても全然動じないで近づいてきて、むしろ私が道をよけてゾウガメが通り過ぎるのを待つんです。

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吉田美穂
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