当然、日本でKAKKOを知っている人などおらず、彼女が残した2枚のシングルは私にとって「もっとも密やかな青春の曲」となりました。
そんなある日テレビを観ていると、見覚えのある女性が流暢な英語を話していました。何の番組かは忘れましたが、最後に「スズキ○○でした。バーイ!」と言ったのを私は逃しませんでした。「あれはKAKKOだ!」。私の予感は的中しました。それから程なくして、その人はドラマやCMに引っ張りだこになりました。「鈴木杏樹」という名前で。
そして2022年。同じくKAKKOへの情熱を抱き続けてきた数少ないひとりでもある藤井隆さんが、なんと32年ぶりに歌手KAKKOを復活させ、伝説の名曲『We Should be Dancing』を蘇らせました。藤井さんにとっても大事な曲を、こうして新たな形にする彼の執念と実現力にはただただ感服。是非聴いてみてください。配信中です。
何よりも「歌いました。KAKKOより」と粋なメールをくださった杏樹さん。この悦びは、彼女が過去をずっと大切にしてきてくれたお陰です。かっこいい。KAKKOだけに。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2022年7月22日号