写真家・宮嶋茂樹さんの作品展「忘れられた香港-The forgotten State-」が8月31日から東京・新宿のニコンプラザ東京 ニコンサロンで開催される。宮嶋さんに聞いた。
* * *
宮嶋さんが香港でデモ隊と警察との衝突を撮影したのは2019年。6月から約半年間、計6回、現地を訪れた。ほとんどは「週刊文春」の取材だったが、それ以外でも個人的に撮影に訪れた。
「最初はごくふつうの報道写真を撮るつもりで行ったです。でも、行っているうちに、(これは見ておかないと)、という気持ちになった。もう、香港に行けなくなるのは悲しいですけれど、作品を発表することでひとつ区切りがついた」
■急速に尖鋭化していった
6月16日、香港島の大通りを写した作品には、名物の2階建てバスがぽつんと見え、それを取り囲むようにものすごい数の群集が道路を埋め尽くしている。
犯罪容疑者を中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」改正案反対のデモが膨れ上がり、主催者発表で200万人が集まった。
そのときの様子を、宮嶋さんは「週刊文春」(6月27日号)にこう書いている。
<これだけの人が集まると、警察も制止するのは“アカン”と思ったんか、野放し状態。メーンストリートのヘネシーロードはデモ隊だらけで車の移動はでけへんから電車で移動するしかなかった>
途方もない規模のデモだったが、「平和な集会でした。逮捕者も出なかった」と、宮嶋さんは言う。
「ところが、次からは急速に尖鋭化していった」
警察はデモ隊に向けてちゅうちょなく催涙弾を発射。それに対抗するように、デモの参加者も地下鉄駅の設備などを破壊した。
「中国本土系の商店もことごとくやられました。あと、銀行。バンクオブチャイナとか。ATMをぶっ壊して、火炎瓶を放り込んだ」
10月1日、警察が実弾を発砲し、デモに参加していた高校生が重体となった。
同じころ、宮嶋さんも警官隊がデモ隊めがけてゴム弾を一斉射撃する様子を至近距離から写している。