なぜフリーにはならなかったかというと、例えば私がフリーになって企画を立てて局に持っていくと、莫大なお金を動かすのにどうしてもその会社の責任者が必要なので、局のプロデューサーというのが作られて、私が作りたいものとそことの戦いになってしまうんですよ。でも私が局の中にいれば、自分で全体の予算管理もしながら、どこにどうお金を使っていくか考えられるんです。あとはフリーになると、それこそやりたくないことをやらないと生きていけなかったりするだろうな、とも思ったからです。日本も変わっていくと思うので、私にとっての「やりたくないことはやらない」のような物差しを何か持っていると、選んだ方をちゃんと正解にしていけるんじゃないかな、と思います。
佐野亜裕美(さの・あゆみ)さん
2006年東大教養学部卒。TBSに入社後『99.9-刑事専門弁護士-』『カルテット』『この世界の片隅に』などのプロデューサーを務める。21年カンテレへ移籍し『大豆田とわ子と三人の元夫』を担当。
(文/東京大学新聞社・鈴木茉衣)