かつてのようにテレビをリアルタイムで、お茶の間でみんなで見る、ということは確かに減っていると思うんですが、今はTVerやU-NEXTなどいろいろなキャッチアップの仕方がありますよね。前より見られていないなという感覚は作り手としてはそれほどないですし、話題になる強度のあるものを作れば届けたいところにも届いていると思います。

──『大豆田とわ子と三人の元夫』は、佐野さんがTBSからカンテレに移籍して最初の作品でした。社長とプロデューサーの仕事に近い部分があるというお話もありましたが、組織に所属しながら作品を作ることの難しさについてやキャリア形成について現在どのように感じていますか

 大事にしているのは、やりたくないことをやらないで済む環境にいたい、ということです。というのも、ドラマを作りたくて制作でTBSに入社して、制作で一貫してやってきたところで、全然違う海外事業部という部署に異動になったんですよ。海外にも通用するようなドラマを作りたいという夢があったので、やるべきかやらないべきかでいうとやるべきだったと思うんですが、そこで一度立ち止まって、制作現場でないところで働く自分が想像できなかったし、単純にやりたくないと思ったんですよね。組織の中だと異動というのがどうしても付きまとうので、そこから逃れる方法というのを色々模索して、カンテレに基本的に制作現場に所属する、という条件付きで採用してもらいました。

 もちろん東京のキー局から地方局への異動で、人材的にも金銭的にもリソースは減った部分は大きいですが、その分自由にできる側面があります。TBSだったらこのドラマの企画は絶対通っていなかっただろうとも思いますし、やりたくないことをやらないためにその道を選んだからこそこのドラマを作れたわけで。一言で言えることではないですが、やりたくないことはやらないという判断基準だけでやっている自分の人生はなかなか悪くないなと思えます。

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