他方、アナフィラキシーの発生率はファイザーが上回る。
アナフィラキシーは、mRNAワクチンに含まれる成分への強いアレルギー反応で、接種後15分前後で全身のかゆみ、じんましん、動悸(どうき)や血圧低下などが表れる。米国では、ファイザーは100万接種当たり11.1例、モデルナでは2.5例と、約4倍の差が見られた。
国内では、メーカーおよび医療機関からの報告を厚労省の審議会が評価したところ(7月7日)、ファイザーは100万接種に7件、モデルナは100万接種に1件の割合だった。
接種にあたっては、過去に薬物アレルギーの経験がある人は当日、医師に伝えてほしい。また、万が一の場合も応急処置の準備はあり、念のために救急車で病院に行くとしても命に関わることはない。
上記のようにファイザーとモデルナで起こる副反応の症状や、発生率に多少の違いはあるものの、いずれも重篤な症状はまれであることに変わりはなく、接種に際してそれぞれの差は懸念されるべきことではないといえるだろう。
■副反応は大なり小なり出るもの市販の頭痛薬でしのげる
ただし大前提として、万人に対し副反応ゼロということはあり得ない。体に異物を入れる以上、それを排除しようとする免疫システム発動の結果が副反応だから、ごく軽微なものは想定しておく必要がある。
初回接種では、接種した部位辺りが筋肉痛のように痛んだり腫れたりする「局所反応」が中心となる。2回目になるとそれに加え、発熱、頭痛、倦怠(けんたい)感(だるさ)、筋肉痛、関節痛、吐き気、寒気など、「全身症状」が強く出がちだ。
米国CDCの調査によれば、ファイザーもしくはモデルナの接種後、頭痛や倦怠感の訴えが初回接種で4割前後、2回目では6割前後に上った。発熱は、初回だと数~5%程度だが、2回目では2~3割に見られた。
こうした症状の多くは接種当日の夜から始まり、たいてい24時間以内には症状は峠を越し、長くても2~3日で治まる。もしつらい場合も、自宅にある市販の解熱鎮痛剤で十分やわらぐ。タイレノール、イブ、ロキソニン、バファリン、ノーシン…などなど、何でも大丈夫。「アセトアミノフェン」に殺到する必要はない。
初回接種後にこうした全身症状が強く出た人は、念のため2回目接種の翌日の仕事は前もって負担を減らしておくか、可能であれば休みが取れれば安心だ。
ちなみに、接種後に立ちくらみや失神などが起きる場合があるが、通常、これはワクチンの“副反応”ではない。「血管迷走神経反射」と呼ばれ、注射の痛みや緊張、不安などが相まって自律神経のバランスが崩れ、急激な血圧低下の結果生じたものである。
接種前に不安を取り除き、少々の痛みや副反応は甘受するつもりで(個人差も大きいが)、穏やかな気持ちで接種に臨むことで、そうした“有害事象”リスクの回避につながる。
なお、新型コロナワクチンで「不妊になる」「ワクチンのmRNAが細胞のDNAに組み込まれる」といった怪しげなうわさがあるようだが、全くのデマなので安心していただきたい。