――他のアーティストも、そうした不安を感じていると思いますか?
不安だとは思いますが、そこまでは考えたくないって気持ちが本音だと思います。若いミュージシャンの中には、あのカオスな光景が作りたくて、音楽をやっている人もたくさんいますから。それを「もう諦めろ」というのは、酷ですよ。僕はもう年齢も年齢だし、キャリアも長いので、そういう風に割り切れることはできますが……。みんな複雑な気持ちを持ちながら活動しているのは、たしかですね。でも、これは現実に起こってしまったことであり、「アフターコロナ」の備えは、考えておく必要はあると思います。
――5月26日、「Ken Yokoyama」は5年半ぶりにフルアルバムをリリースしました。やはり特別な感情が湧きましたか?
毎回新作を出すたびに、人生の大きな節目のような感覚ではあります。曲ってリリースされるまでは、僕たち「バンドのもの」なんです。でも、リリースされた後は「みなさんのもの」になる。毎回そんな感覚があります。だから、リリースされるまでは、音源をめちゃくちゃ聴くんですよ。レコーディングは終わっているから、もう直せないのに、ずっとチェックしている。でも、リリースされた瞬間から、ピタっと聴かなくなる。これ、どういう心理が働いているのか分からないけど、不思議な感覚だなっていつも思います。
「Ken Yokoyama」は2018年に新ドラマーが加入しましたが、今回のアルバムは、そのドラマーの個性がフルに反映されていると思います。僕らは「粒立ちがいい」っていう表現をよく使うんですけど、今回はシャープで迫力あるかっこいいドラムが録れたんです。曲って、実はドラムが核になっていたりするので、今回は「歌とドラムだけ」でも十分勝負できる、そんなアルバムになりました。ドラムを全面的に出せたことで、ギターやベースなどの他の楽器も自由度が高まり、似たような曲でも、いろんな表情をつけることができたのも大きい。新たな「Ken Yokoyama」を感じることができると思います。