1990年代、若者に絶大な人気を誇ったロックバンド「Hi-STANDARD」のギタリスト・横山健(51)。新型コロナウイルスの影響で音楽業界が大打撃を受ける中、横山は2004年に結成したバンド「Ken Yokoyama」で5年半ぶりとなるフルアルバムをリリースした。緊急事態宣言中ではあったが、今月はロックフェスにも出演。7月にはリリースツアーの開催も予定するなど、ベテランとは思えないほど精力的に活動している。アーティストだけじゃなく、インディーズレーベル「PIZZA OF DEATH」の代表取締役も務める横山は、コロナ禍に揺れる音楽業界を、どのように見つめているのか。音楽メディア以外の露出が極端に少ない横山が、AERA dot.のインタビューに応じた。
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――6月6日、「Ken Yokoyama」は、ロックフェス「サタニックカーニバル」に出演しました。緊急事態宣言中ということもあり、観客はマスクをつけ、大声を出せない中での開催でした。これまでとはまったく異なる環境でのライブは、いかがでしたか?
いろんな捉え方はあるかもしれませんが、どんな規制があろうと、人がそこにちゃんと存在してくれるっていう状況の中で、ライブができたことは素晴らしいことですし、音楽業界にとっても、大きな意味があることだなと感じました。何より、出演していたバンドがみんな良い顔をしていたし、僕らもすごく楽しかった。ステージ上からお客さんに話しかけると、これまでであれば「うおー!」とか歓声で応えてくれていたんですけど、今回はすべて拍手で返ってくる。それが、途中からだんだん面白くなってきましたね。だって下ネタを話しても全部拍手で返ってくる(笑)。今回のライブは「PIZZA OF DEATH」主催でもあり、批判も当然覚悟の上でしたが、やれてよかったなと心から思っています。
――「Hi-STANDARD」「Ken Yokoyama」など、横山さんが所属するバンドは、通常であればモッシュやダイブが起きる激しいライブになります。戸惑いはありませんでしたか?
正直、最初は変な感じがしましたね。ただ、それは予想できていたことでもあるので、気持ちの上ではどこか冷静に見ていた自分もいました。この先、コロナが収束したとしても、コロナ前のような状態に完全に戻るには、まだ相当な時間を要すると思います。もしかしたら、あのライブハウスがギュウギュウで、みんなが押し合いへし合いだったカオスな光景っていうのは、もう戻ってこないかもしれません。個人的には「もう戻ってこない」っていう前提で、今後のバンド活動は進めていったほうがいいなと思っています。