ビリヤニ大澤/7月に東京・神田にオープンする予定の大澤さんのビリヤニ専門店。客席は10席で、予約のみ。テイクアウトや冷凍通販も予定している ※価格はハーフ1800円を予定/炊きたてはかなりのハイレベル。冷凍やテイクアウトもレベルが高い。https://osawa.biriyani.co.jp(撮影/福光恵)
ビリヤニ大澤/7月に東京・神田にオープンする予定の大澤さんのビリヤニ専門店。客席は10席で、予約のみ。テイクアウトや冷凍通販も予定している ※価格はハーフ1800円を予定/炊きたてはかなりのハイレベル。冷凍やテイクアウトもレベルが高い。https://osawa.biriyani.co.jp(撮影/福光恵)

 ところが帰国後は、現地で食べた味に出合えず、苦しむようになる。日本ではビリヤニを出すインド料理店も少なかった。

「そもそもが、凝り性の、コメ料理好き。学生時代はチャーハンに凝って、3食チャーハンを作って食べていたこともあります」(大澤さん)

 そんな素質が、今度はビリヤニワールドを舞台に開花する。おいしい味を求めて自分で材料や作り方を研究する、「沼」の日々のスタートだった。

 11年からは、自身の研究成果を知人らにふるまう「ビリヤニパーティー」を始めた。沼にはまった人たちが週1回のペースで集まり、翌年には、ビリヤニのまかないがついたシェアハウス「ビリヤニハウス」までオープンさせた。

 まもなく、有名インド料理店「ガラムマサラ」(東京都世田谷区)で働くようになり、定休日には店を借りて、「ビリヤニマサラ」を開店。いわゆる「間借りカレー」のはしりで、この店を軸にファンがどんどん増えていった。スープカレーどころか、「すし食べる?ビリヤニ食べる?という世の中が必ずくる」と豪語する伝道師の道を、順調に歩んでいった。

 SNSでもビリヤニのおいしさが広まり、20人ほどが限度のパーティーはあっという間に満席に。月に延べ270人もが大澤さんのビリヤニを食べにくるようになった。そんな20年初め、コロナ禍がやってきた。

「ビリヤニは大きな鍋で作ったできたてを皿ですくい、数十人で顔をつきあわせて、一気に食べるのが一番おいしい。でも密になるそのスタイルのビリヤニパーティーが、コロナ禍以降はできなくなってしまうんです。ビリヤニってもうオワコンなんだ……そう思って、一気に体の力が抜けました」

■ロスで「禁断症状」

 それまで大澤さんが作ったビリヤニは300鍋以上。しかも、おいしさをとことん追求するため、1鍋につきっきりで3~4時間かかるようになっていた。

 まさしく時間的にも、マインド的にも、「NOビリヤニ、NOライフ」。そんな人生を取り上げられたショックから店に出勤もできなくなり、ビリヤニハウスの自室でひとり鬱々(うつうつ)とする日々が続いたという。

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