「全国地震動予測地図2020年版」を基に、「今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率」を示した。また、気象庁の「震度データベース検索」を使い、16年1月から今年5月17日までの約5年半で、全国の県庁所在地で起きた震度1以上の地震の回数を集計した(AERA6月7日号から)
「全国地震動予測地図2020年版」を基に、「今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率」を示した。また、気象庁の「震度データベース検索」を使い、16年1月から今年5月17日までの約5年半で、全国の県庁所在地で起きた震度1以上の地震の回数を集計した(AERA6月7日号から)

 そこで、政府の地震調査委員会が今年3月に公表した「全国地震動予測地図2020年版」を基に、「今後30年以内に震度6弱以上の地震が起きる確率」を日本地図で色付けした。地形の色が青色から紫色に濃くなるほど、今後30年で大地震が起きる確率が高まることを示す。さらに、「盛岡市6.3%」のように全国の県庁所在地には今後30年以内の発生確率を数値で表した。東京は47%、大阪市は30%、福岡市は6.2%などと地域によって差があることがわかる。

 あらためて地図を見てほしい。

 近年、揺れた回数は少ないのに今後30年間の大地震の発生確率が高い地域もある。その逆もしかり。揺れた回数と将来の確率は必ずしも一致しないことが見て取れる。「揺れが少ないから安心」などと考えてはいけないことを数字が示している。

 そもそも「地震動」とは、地震に伴う地面や地中の揺れのこと。全国地震動予測地図は、過去の地震や地盤の固さ、活断層調査など最新のデータを基に作成。第1版は05年につくられ、その後、1年から2年ごとに評価され算出する。今回算出したのは18年以来。その結果、全国で最も確率が高いのは水戸市で「81%」となった。

太平洋側で「高い」確率

 水戸で高いのは、なぜか。地震のメカニズムに詳しい東京大学地震研究所の古村(ふるむら)孝志教授(地震学)は、太平洋プレートの地震の影響が大きいと話す。

「茨城沖は太平洋プレートが陸側の北米プレートの下に沈み込むプレート境界域で、もともと地震活動が高い場所。M7~7.5規模の地震が、20年から30年に1度の割合で起きています。それがしばらく起きていないので、そろそろ起きる可能性が高くなっています」

 さらに、水戸市は平野部にあり、川の氾濫で運ばれた泥や砂が堆積した軟らかい土地が覆っているため、揺れが大きくなりやすいという。

最大震度7を記録した2016年4月の熊本地震から5年。熊本県益城町では今年4月、復興を願うメッセージが書かれた灯籠が置かれた(c)朝日新聞社
最大震度7を記録した2016年4月の熊本地震から5年。熊本県益城町では今年4月、復興を願うメッセージが書かれた灯籠が置かれた(c)朝日新聞社

 地図を見ると、北海道から四国にかけての太平洋側で濃い紫色、つまり確率の高い地域が目立つ。なかでも、古村教授が特に注目しているのが、東北だ。東北地方太平洋沖地震から10年たち、余震も減った。今後30年以内に震度6弱以上の強い揺れに見舞われる確率は福島市が9.3%、仙台市は7.6%と低い。しかし、「余震が落ち着いた、強い揺れの確率が数%程度だからと言って、安心はできない」と古村教授は警鐘を鳴らす。

 太平洋側の東北沖では、東北地方太平洋沖地震のようなM9クラスの地震は600年に1度程度の割合で起きているが、10年前に発生したので、今後30年以内にM9クラスの地震の発生確率はほぼゼロと考えていい。だが、この地震とは別に東北沖の各地では、M7~8クラスの大地震が数十年に1回の頻度で起きており、いつ起きてもおかしくないと心配する。(編集部・野村昌二)

※AERA 2021年6月7日号より抜粋

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