「高津監督は現役時代に守護神として投げていたので、ブルペン陣の気持ちが理解できる。他球団の救援陣を見ると、点差に関係なく登板を重ねてバテてしまうケースが目立つが、高津監督は投手コーチと綿密にコミュニケーションを取り、選手たちのコンディションに細心の注意を払っている。故障は絶対にさせないというのが念頭にあるのでしょう」(スポーツ紙デスク)

10位以内は1人だけ

 かつて「投手出身に名監督なし」と言われた時代があった。現在12球団の監督で投手出身は高津監督、楽天・石井一久監督(48)、DeNA・三浦大輔監督(48)、広島・佐々岡真司監督(54)の4人。巨人を率いた藤田元司氏、中日阪神、楽天の監督を務めた星野仙一氏(ともに故人)、ソフトバンク前監督の工藤公康氏(59)が名将と呼ばれるが、日本野球機構(NPB)の監督勝利数ランキングで10位以内に入っている投手出身の監督は、巨人の初代監督などを務めた3位の藤本定義氏(通算1657勝、故人)だけだ。

 実際に野村克也監督(故人)のヤクルト時代の「ID野球」の教え子たちの中で、名捕手の古田敦也氏(56)、球界屈指の遊撃手として活躍した宮本慎也氏(51)が「名監督の資質」を兼ね備えていると予想した人たちは多かった。高津監督は日米通算313セーブを挙げるなどしたが、失礼ながら指揮官として黄金時代を築くことを予想したヤクルトファンは少なかったのではないだろうか。

ヤクルト・高津臣吾監督の現役時代
ヤクルト・高津臣吾監督の現役時代

「育てて勝つ」の指導

 まだ、名将と評価するには早いかもしれない。しかし、その階段を上っていることは間違いないだろう。高津監督を現役時代から取材してきたスポーツ紙記者はこう分析する。

「高津さんは日本、米国、韓国、台湾と四つの国・地域のリーグでプレーした初の日本人選手です。名球会に入った選手の中では異色のキャリアでしょう。独立リーグ・新潟では選手兼監督を務め、どうすれば勝てるか、どうすれば能力を引き出してNPBに多くの選手を送り込めるか考えていた。ヤクルトの2軍監督時代も故障者が続出して選手のやりくりに苦労していた時期があった。こういった経験が『育てて勝つ』指導のベースを築いていると思います。高津さんを見ていると、選手によって接し方が違う。性格や置かれた立場を考えながら、コミュニケーションを取っている。『投手出身だから監督に不向き』ではないことを高津さんは証明していると思います」

「高津スワローズ」に死角は見当たらない。(ライター・梅宮昌宗)

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