高木:そんなこんなでなんとかやってきたんですけど、3年ほど前、娘の小学校にネタをしに行ったことがあったんです。小学校の文化祭で、地域に住んでいる文化的な人を呼ぶという企画があって、娘がその年から入学したこともあって僕らが呼ばれたんです。
池谷:普通の舞台じゃないですからね。娘の小学校で、しかも、入学してすぐのタイミング。もしスベったら、6年間ずっと言われかねないですから。相方ながら、よく引き受けたなと。
高木:お断りして「『ジョイマン』は断った」ということを残すのもイヤですし、そのことが変な伝わり方をして、娘に変な作用を及ぼすのもイヤでしたし。だったら、道は一つしかない。引き受けて、ウケるしかない。
もちろん、なかなかのハードルではありますけど(笑)、絶対に勝つしかない戦いで勝つ。そうするしかないと思ったんです。
そして、当日。すごくウケました。
僕らがテレビに出ていた頃はまだ生まれていない子たちがほとんどだったんですけど、そこにウケた。それは芸人として純粋にうれしかったですし、それが娘の学校でできた。そこも、もちろん大きかったです。
娘はナナ(本当は漢字表記)という名前なんです。ネタの中の「ナナナナ~」という部分から取ってつけました。そういう文脈があるので、娘に「自分の名前がイヤだ」とは思ってほしくない。娘と娘の友だちの前でネタをやることで、そして、ウケることで、自分の名前に胸を張ってほしかったというのもありました。
そうなると、ますますスベれなかったんですけどね(笑)。そして、その日を境に、自分の中でもしっかりと仕事に胸を張れるようになったと感じています。
それ以来、ネタをするにしても意識が変わりました。
娘は自分の名前がナナだから、お父さんは「ジョイマン」として「ナナナナ~」というネタをしてると思っているんです。自分の名前が先で、ネタが後だと。
本当の流れは逆なんですけど、それが僕にも浸透したというか、今は「ナナナナ~」とネタで言ってると、娘の顔が思い浮かぶようになりました。