東大合格者数ランキングで40年連続1位が確定的となった私立中高一貫校の開成(東京都荒川区)は、1871年創立という長い歴史を持つ。これまで政界や財界、文壇、音楽界など幅広い分野に卒業生を送り込んできた。個性豊かな人材が育まれる理由を、各界で活躍するOBたちに尋ねた。
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【前編/なぜ官僚に開成出身者が多いのか? OB「官僚向きの人を選抜」】より続く
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マネックス証券会長の松本大氏(82年高校卒業=以下、かっこ内は高校卒業年)は09年、金融機関、関連省庁に勤めるOBに、開成の同窓会(開成会)の一つ、金融開成会の結成を呼びかけた。ただ、組織として活動するわけではなく、親睦会が終わるといったん解散する。
ほかに法曹、医学などさまざまな分野で開成会がある。
開成会会長で自治医科大学長の永井良三氏(68年)は東大医学部出身。同大附属病院長、宮内庁皇室医務主管などを務め、12年に上皇さまが受けた心臓手術の主治医でもある。開成時代を振り返る。
「先生方が非常にレベルの高い授業を行っていました。世界史、古文、漢文などは、いまでも役に立っています。のちに大学で教える有名な先生もいて、受験対策ではなく教養主義的な内容でした。開成では人生の基礎、学術の横断知識を身につけることができました」
一方で、いまの開成の生徒についてこう話す。
「開成に限りませんが、優秀な人は点数稼ぎに走り、自分の意見を言えなくなることがあります。そのためか優秀な割には力を発揮していない人が多い気がします。大学に入ることが目標というのでは困ります。そのあとの新しい世界を自分で開拓して、自分の能力を公のために生かす努力を続けてほしいですね」
OBには医師も多い。黒木登志夫氏(54年)は東北大医学部出身で、岐阜大学長を務めた。医学開成会のウェブサイトで3月12日、新型コロナウイルスについてこう警鐘を鳴らした。
「第3波が収まってきたと安心してはいられない状況になってきました。変異ウイルスによる第4波の大波は身近に迫ってきています」