クイズ研究部のメンバーも適度な距離感を保ちながら、互いに優れたところ、得意でないところを助け合ってチームを作ってきたという。
「開成には努力を認め合う文化があります。実力主義社会なのでなれ合いはなく、かといってお互いの優れた知識をリスペクトして、適度な距離感でチームになっていく。そのやり方がうまいんです。依存ではない信頼関係があります」
この開成中学・高校の校長に昨年就任したのが野水勉氏(73年)だ。東大工学部、同大大学院工学系研究科出身で、専門は工業分析化学。名古屋大で長く教壇に立ち、途中、米ハーバード大に研究留学もした。その後、名古屋大で国際交流・留学生交流を担当。総長補佐も務めて大学のグローバル化を進めた。
開成在学中は理化学部に所属。社会問題となっていた公害を解決できればという思いもあり、化学の研究者になった。開成から東大進学者が多いことについてこう話す。
「学校は生徒が希望する進路を聞いて後押しするというのが基本です。長年、東大合格者数が多かったので、先輩などから刺激を受けて、多くの生徒が東大をめざすようになったと思います。たしかに生徒は優秀です。が、どうしても均一な集団になりやすい。ぜひ、語学力をつけて海外で学び知見、見聞を広げてほしい。海外の大学にも目を向けてほしいですね」
卒業生からノーベル賞受賞者は出ていない。
「期待はしたい。でも、狙って取れるものではなく、地道な研究の下、独創的なアイデアですばらしい研究成果が生まれます。開成出身者にはそれができると思います」
(小林哲夫)
※週刊朝日 2021年4月2日号より抜粋