「仕入れ値が上がっている中で値段を下げれば、原価率は当然上がり、利益率は低下しますが、値下げによって客数が増えることで利益を確保できると考えています」(同社広報部)
同社によると、焼肉の和民は居酒屋から転換した駅前の店が多い。コロナの感染拡大が和らいだ後も駅前の人通りは回復せず、思うように客足は戻らない。値上げをすれば、さらに客離れを招く恐れがあった。新しい価格への切り替えが進んだ5~6月は、客数が前年比で倍増したという。
とはいえ、これまで価格を据え置いてきた会社も、盤石とばかりは言い切れない。経営環境が悪くなり、一部には揺らぎも見える。
■8月以降の方針 決めかねる社も
7月いっぱいは全商品の価格を据え置くハイデイ日高(さいたま市)の「日高屋」は、8月以降の方針はまだ決めかねている。
「当店は、もともと低価格である点を魅力に感じてくれるお客様が多い。ですから、今までどおりお客様に来てもらえるように、できる限り自社の努力で原材料の値上がりを吸収しようと努めてきました。でも、ここまで原材料費が上がると……。社内にもいろいろな意見がありますので、(8月以降の方針は)これから話し合っていきたい」(経営企画部)
4月から「バーミヤンラーメン」や「油淋鶏」など定番人気メニューを値下げしていた、すかいらーくレストランツ(東京都武蔵野市)が運営する「バーミヤン」も、価格の再改定を検討中。価格据え置きを売りにしてきた小売り大手のイオン(千葉市)は、7月4日からPB「トップバリュ」のうち、マヨネーズなど3品目を値上げした。
当初は6月末までとしてきた約5千品目については、7月以降も価格維持に努めるものの、マヨネーズ(500グラム)は税込みで170円から213円に、ノンフライ麺は1個62円から73円に、「外箱を省いたティシューペーパー」(5個入り)は206円から214円にそれぞれ値上げした。原料の油や小麦の価格が上がったことに加え、物流費の高騰や急激な円安も重なり、値上げせざるを得ないという。