大の苦手という虫もその方法で?と問うと、ため息をついた。

「虫は無理。虫に関しては克服する気もないんで。まあ、うわぁ!って思っても、だいたい誰かが助けてくれるから」

誰かを助けるためなら

 リーダーでもあり、インタビューや会見では締めのコメントを求められがちだが、毎回、しっかりと自分の言葉を持っている。常に考えているからなのか、それともさっと出てくるのか。

「それは自分でもわからないんですけど……前にテレビ番組で占ってもらったとき『ほとんど運と勘だけで生きてます』って言われて。うれしさ半分、なんか頭全然使ってないって言われてるみたいだなっての半分(笑)。でも、勘が鋭いって言われることは多いですね。直感で選んで、結果よかったなと自分で思うこともあるし。そういう感性は、すぐ反応できるように磨いておきたいなって思ってます」

 言葉を持っているのは確固たる信念があるからかもしれない。最も大事にしていることは?

「なんだろうな。嘘つかないこと。年を重ねてくると、周囲に合わせざるを得ない状況ってあるじゃないですか。そういうかたちでの嘘もかなり苦手で。純粋にみんなが100%でいいよねって言っているものでも、俺が100パーでいいと思わなかったら、多分そう言ってしまうと思う。誰かに合わせて、自分の人生を生きていくのはもったいないなあって。まあ、わがまま言うのは違うなって思うんですけど、でも、見たもの、聞いたもの、感じたこと、あ、わかる、ってなれる人と、わかる、ってなりたい」

 じつは以前、持ち歌の歌詞にちなんで「ついてしまった小さな嘘」を明かしてほしいと頼んだことがある。すると岩本は、「俺、嘘つかない……」とじつに情けない表情になって、めずらしく何分も考え込んでしまった。嘘をつかないことが、あまりにも当たり前のことなのだろう。では、もしも、誰かを助けるために嘘をつかなければいけないとしたら?

「つきます。もちろん嘘の内容にもよるけど。もしも誰かが傷ついたり、苦しんだりするんだったら、その役割は自分でいいかなって思います」

 何も考えずに誰かを助け、信念を曲げても誰かを守る。歌も踊りも演技も、コメントや振り付けまでも器用にこなす岩本の、ちょっと不器用でもあるまっすぐな生き方が、映画に重なった。(編集部・伏見美雪)

AERA 2022年7月11日号

[AERA最新号はこちら]