(撮影:島田真希)
(撮影:島田真希)

東京では、スナップ写真を撮りに行く、というのはないな

「それまではちょっとバリ島にこだわりすぎていた。撮る対象をゆるく広げようと思った」と、島田さんは振り返る。

「完成形は見えないけれど、生活のなかにカメラを持ち込み、とりあえず毎日というか、歩いていて気になったらシャッターを切っていこう、というスタンスに変えたんです。通りすがりに、無意識に撮ったような写真がいっぱい集まったら、そのなかから、何か自分の意識が見えてくるんじゃないかな、と思って」

 ただ、実際にそうやって写された作品を目にすると、粘り強く被写体と接し、きちんと構えて撮影した印象を受ける。

 そう、指摘すると、「いや、こんな感じです」と、右手を持ち上げた。愛用のデジタル一眼レフ「キヤノンEOS 5D Mark IV」のレンズつきで1キロを越す。それを片手で、ブレずにシャッターを切れるのだから大したものだ。「握力は結構強いんですか」と、たずねると、ニンマリ。

「車中泊をしながら、青森とか四国とか、ちょっと遠出するときは、ガッツリ、撮影しようと思って行く」。でも、「東京にいるときは、スナップ写真を撮りに行く、というのはないかな」。

「基本的にカメラは撮影の仕事で持っているものだし、買い物に行くときにも持って行こうか、みたいな感じです。なんか、積極的に『スナップしよう』ってなったら、決めつけるように撮ってしまうじゃないですか。ここに人がいないと、カッコよくない、とか。そういうのじゃなくって。自分の目がカメラになったような写真が撮りたかった」

 スナップ写真は絶対に狙わなくちゃいけないものではないし、出来上がった後で気づくものがあってもいいと思う、と言う。

(撮影:島田真希)
(撮影:島田真希)

こういう時期だからこそ、人は人を求める。私自身がそうだから

 JR品川駅の東西をつなぐコンコースで、押し寄せる人波を写した写真がある。みな一様に表情は硬く、重苦しい雰囲気が漂っている。いつものようにカメラを持った片手を上げ、3カット撮影したうちの1枚だ。

「この写真が撮れたときに、表現の軸にできないかと思ったんです。私もこの群衆の中にいるんですけど、第三者のような目で自分の存在を見つめて、不思議な感じがするのが好きなんです。自分が生きている時間の流れのなかで、『なんで、いま自分はここに立っているんだろう』と。それを再確認するというか……」

 人は街を歩いていて、目の前にいる人を見たときに何か思うことがあるはずという。それを伝えたい、そのために選んだ写真がこうなった。

 展覧会の開催は今春、決まった。しかし、コロナ禍でギャラリーが臨時休館してしまい、展示の延期を余儀なくされた。

「仕切り直しで、来年の開催を希望された方が結構いらっしゃるんですけれど、逆に私はこの時期の写真展を希望したんです。こういう時期だからこそ、人は人を求める。私自身がすごくそうだから。人はひとりじゃなくて、絶対に交わりあって生きている。特に『コロナだから』ということを強調しなくても人とのつながりをすごく感じてもらえるんじゃないかな、と思うんです」

                  (文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】島田真希写真展「人、人、人、I’M HERE」
キヤノンギャラリー銀座
12月3日~12月9日、キヤノンギャラリー大阪 2021年1月14日~1月20日。

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