失敗を生かし、確実にステップアップしてきた。再度来店した依頼主に「あの時はありがとう」と言われるとうれしい。「次もあなたに」と声をかけられると、もっとうれしくなり、「また張り切っちゃいます」と笑う。
そんな志村さんが毎日欠かさず身につけている物がある。20代の頃から履いている9センチのヒールだ。どんなに疲れていても、絶対に9センチ。何を履いても自由な職場だが、あえて履くのだという。
「余分な葉を取りのぞくのも、器に水を張るのも、一つ一つに丁寧に向き合いたい。そのためのスイッチを入れてくれるのがヒールなのかもしれません」
そう話す姿は、凜とした花のようだった。(ライター・浴野朝香)
※AERA 2022年7月11日号