●諸悪の根源“集金システム”
コンテンツの割高感がNHKヘイトの大きな要因になっているのは確かだが、さらに根幹に元凶がある。受信料の集金システムである。
平成20年に訪問集金は廃止となり口座振替や継続振り込みなどが可能となったようだが、それでも最初の1回目は集金人が契約を迫りに訪問してくる。この令和の時代に実にアナログな手法であり、いかにも「取り立てが来た」という気持ちを視聴者は禁じ得ない。受信契約は一応義務という名目だが、居留守や拒否をし続ければなんとか免れるケースもあるらしいと世間に知れ渡っているから、なおさら“契約すると損した感”が強まる結果となっている。
集金人の評判が芳しくないのも集金システムの問題の一つである。非礼極まりない集金人の訪問など、歓迎されるはずもない。もっともこれには視聴者側にも原因がある。前段階として、視聴者側は契約前に「なるべくなら支払いたくない」と考え、さらに「集金人には無礼な人が多いらしい」と態度を硬化させている。集金人もそれを承知しているから、「難しいだろうがなんとしてでも契約を取らねば」と一種戦闘的な気持ちで訪問に赴く。その集金人の様子を見て視聴者は、「やっぱり態度が良くない」と感じ、悪評を広め、さらに集金人の立場が悪くなっていくという悪循環である。
ことわっておくが、集金人その人自体にはなんの罪もない。仕事を全うしているだけである。しかし恨みを買いやすい職業というのは事実であり、罪があるとすれば働くその人ではなく、現場で働く個人に恨みが向きやすいシステムである。だからここをなんとかするなら、システムを刷新するか、“愛される集金人”の育成を目指した抜本的な改革が必要である。
受信料を廃止して税金で運営してはどうか、という議論もある。「そうなると国の圧力が強まって、いずれ大本営発表化するのでは」とした懸念も聞かれるが、少なくとも現在よりはヘイトは薄まるであろう。消費税、酒税、たばこ税あたりはヘイト管理がうまくいっている例で、商品の値段に税が含まれているので、税を支払った感があまりないまま納税される仕組みとなっている。たまに我に返った時「ちょっと税金、高すぎじゃないか」と憤然とするが、支払いは不可避とわかっているので諦めもつきやすい。“受信料”が“受信税”となれば有無を言わさず徴収できるため、現状の「払わなくてもいいかもしれない受信料」「わざわざ支払う受信料」よりよほど納得感が備わるはずである。
受信料が税となった場合は住民税のように振り込みか口座振替によって行われそうだが、そこは消費税のヘイト管理を参考に、テレビやワンセグチューナーに受信税を上乗せする形がよろしかろう。
NHKが生まれ変わるための活路は無数にあるはずなのだが、どれもなされないまま今回の「テレビ設置の届け出義務化要望」なのだから、ズレているといわざるを得ない。
ここまで散々くさしておいてなんだが、最近のNHKにはがんばっている部分もある。先に触れた「チコちゃん」のような娯楽放送の充実もそうだし、知り合いのフリーの記者からは「日の当たりづらい分野についてもNHKの記者はよく取材している。余裕のあるNHKだからこそ、できることなのだと思う」という話も聞いている。だから、制作の現場では真摯(しんし)な取り組みの熱量がしかとあって、それがコンテンツの質の向上につながっているはずである。
ずれたかじ取り経営陣とひたむきにがんばる現場が、NHKに併存しているわけだが、NHKが本当にダメな組織なら、現在はがんばる現場すら存在していなかったはずである。だから二者の併存が生まれたこの状況は、これまで何かと追い詰められつつあったNHKが生まれ変わろうとしている兆しに見えないこともないのである。
個人的にはNHK制作の取っ組み合い必至の討論番組を見てみたいところではあるが、そんな色モノコンテンツに頼らなくても、公共放送としての凜(りん)とした品格を視聴者に認めさせる地力がNHKにあると期待したい。とにかくNHKは受信料システムで世評的に甚大な損をしているので、ここをどうにかすべきである。