
長く続いた就活「売り手市場」がガラガラと音を立てて崩れていく。五輪特需でピークともいわれた2021年卒生の就活は、突然の新型コロナウイルス禍によって大きな転換を強いられた。就活生にとっての“人気企業”に多くの学生を送り出してきた大学は、どう動いたのか。AERA 2020年10月26日号、「採用したい大学」特集から。
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不況になるほど採用の幅は狭まりターゲットは強まる傾向にある。
同志社大学のキャリアセンターには、4月に学生からこんな相談があった。
「企業からの連絡が突然こなくなりました」
聞けば、ビフォー・コロナにあたる昨年の秋冬のインターンに参加した学生は選考が進んでいて、内定を取った学生もいるという。3月以降に接点を持った学生の選考が軒並みストップしているとわかったのは、ゴールデンウィーク直前だった。

「見捨てられた」の理由
同大キャリアセンターの岩田喬(たかし)所長が言う。
「学生にとっては緊急事態宣言下の時期が一番孤独でした。4年生の中には自分たちが見捨てられたと感じる学生もいます」
20年春も日本生命保険や日本航空へ卒業生を大量に送り込んだ同大。学生を安心させるべく緊急メッセージを出し、7月には、この時期に異例の大規模な学内企業説明会を実施した。
「外出自粛で就活は2カ月ほど遅れていると考えてもいい。説明会にはオムロンや日本銀行などの大手にも参加していただき、企業からも好感触でした。航空業界から金融業界などのグローバル部門へ切り替える学生も多く、期待しています」(岩田所長)
長引く就活だが徐々に元の光景に戻りつつある。
10月初旬、東京都庁の目と鼻の先にあるビルの地下に、リクルートスーツに身を包んだ学生たちが次々と入っていく。たどり着いたのは、21年卒生を対象とする合同企業説明会場だ。
2日間のイベントに参加した学生は約470人。企業と学生の間には感染防止のためのビニールカーテンが吊られ、無駄なおしゃべりをしづらい空気もある。それでも、オンライン就活と比べれば、企業の「熱」を肌で感じられる。参加していた成蹊大文学部に通う女子学生(22)は、こう話した。