撮影:鹿野貴司
撮影:鹿野貴司
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写真家・鹿野貴司さんの作品展「#shibuyacrossing」が9月18日から東京・銀座のソニーイメージングギャラリーで開催される。鹿野さんに話を聞いた。

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 今回展示される作品の多くはInstagramを彷彿させる真四角なフォーマット。加えてハッシュタグを使ったタイトル。

――やはり、タイトルはInstagramを意識したんですか?

「場所がチョー限定されているし、誰でも知っている場所でしょう。いちばん代表的なタグだったので、タイトルはこれしかない」と、「そのまんま」。

「いちばん最初、日本語で『渋谷スクランブル交差点』って、タイトルを考えたんですけれど、さすがにベタすぎました(笑)」

やるなら一番乗り。二番目はねえな

 若者文化の発信地、東京・渋谷にある「日本一有名な交差点」。これほど多くの人が行き交う横断歩道は、世界中探してもここだけ、らしい。サッカーワールドカップ、ハロウィンの日には圧倒されるほどの人波が押し寄せ、交差する。いまや日本を代表する人気観光スポットとなった交差点。それを撮影しようと、観光客が横断の途中で立ち止まり、カメラを向ける。

「テレビでニュースとか見ていると一日一回は出てくるし、ことあるごとに映し出される、みたいな場所。そういう場所って、たぶん日本にほかにはないでしょう」

 ちなみに渋谷といえば、写真集『シブヤ、シブヤ』(平凡社)を出した石元泰博(※1)を始め、これまで数多くの写真家が写してきた。

「でも、この場所に絞って撮った人はいままで見たことがない。ほんとうに狭い、直径100メートルもないくらいのエリアでいろいろなことがある。あの狭い範囲だけで写真展をやったら、面白いな、と。やるなら一番乗り。というか、二番目はねえな、と」

撮影:鹿野貴司
撮影:鹿野貴司

ひょんなきっかけで編集者から写真家に転身

 1974年、東京・葛飾生まれ。ストリートスナップは高校時代からという筋金入りで、「ずっと東京を撮ってきた」。2003年には初個展「Tokyo Sunny Day」(コニカミノルタプラザ)を開催した。

 10年ちょっと前まで講談社で編集者をしていたが、ひょんなきっかけで写真家に転身した。

「たまたま取材で訪れた身延山(山梨県)で仲よくなったお坊さんが、ぼくが趣味で写真をやっていることを知って、『まあ、よかったら、撮っていいよ』と言われて、五重塔を再建するドキュメンタリーを撮らせてもらったんです。ぼく、別に写真を撮る仕事じゃないのにいつもカメラを持って写していたので、自分たちが撮るより、ある程度心得のある人に撮影してもらったほうがいい、ということだったんでしょう。それが写真集『蘇る五重塔 身延山久遠寺』(平凡社)になった」

 それを契機に「なんか山梨県に縁がいっぱいできて」、写真集『感應の霊峰 七面山』(同)、『日本一小さな町の写真館 山梨県早川町』(同)と、作品を次々にまとめた。そうこうしているうちに、すっかり写真家に。

「考えてみれば、いつも狭い範囲だけで作品をまとめているような(笑)。身延山の五重塔も狭い範囲だし、七面山も登山道だけだし。早川町も面積は広いですけど、千人くらいの町だし。まあ、そういう限定されているものをまとめるのが好きというか、習性なんですかね」

 早川町での撮影は約5年を費やし、多くの人の協力によって成し遂げられた。

――今回の作品もプロジェクトとして着々と撮影してきたんですか?

「いやいや、そういう戦略的なことは何もなくて……。早川町のも最終的にはかなり大掛かりになったんですけれど、最初はふわっと始まった。だんだん関わる人が増えて、お金の問題とかも大きくなったんですけれど、最初から結果に向かって進んだわけじゃないんです。今回はこれまで東京をずっと撮ってきたこともあって、2020年に向けて何かやらんとなあ、と。ゆるい感じで始まった」

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