写真家・山内悠さんがモンゴルで追い求めた「楽園」を綴った写真集『惑星』(青幻舎)を出版した。
光沢感のある灰色の硬い表紙。そこに宇宙船の窓のような丸い写真がはめ込まれている。立派な角をはやしたトナカイとあどけない顔の少女が地面に腰を下ろし、こちらにやさしいまなざしを向けている。青い空、赤い花の咲く草原。そこからゆったりとした時間が流れ出てくるような気がした。
山小屋の手伝いなどをしながら八ケ岳山中で暮らす
8月上旬、山内さんにインタビューを申し込むと、「これから富士山の山小屋に布団干しに行かなくちゃならないんで会えないですよ。ははは」。そんなわけで電話越しに話を聞いた。
10年ぶりの写真集。前回は標高約3000メートル、富士山の山小屋「大陽館」にのべ600日間滞在して写した雲上の光景を写真集『夜明け』(赤々舎)にまとめた。その後も山小屋の手伝いなどをしながら長野県・八ケ岳山中で暮らしているという。
表紙の写真を見て、まさに楽園を感じましたよ、と感想を伝えると、「自分でもこの写真を見て、楽園だな、と思ったんです。ははは」。よく笑う人だ。
「そう、楽園を探す旅だったんです。ぼくの中では……」
聞くと、モンゴルの撮影を始めたのは6年前。前作を出したとき、確か西表島を撮ると言っていたはずだが、以前からモンゴルに興味があったのだろうか?
「いや、まったくなんの興味のなかったですね」
あっけらかんと言う。
譲り受けた空き地がきっかけでモンゴルへ
「ずっと富士山で暮らすようになって、ぼくたちは自然の一部、宇宙の一部なんだと感じるようになったんです。じゃあ、なんで人間は自然から離れていくのか。そんな疑問が湧いて、自然の中で暮らそうと、長野に移住した。そこでご縁があって、山のなかの空き地を譲り受けたんです。家を建てようと思ったんだけど、お金がない。何かないかなと探していたら『ゲルだ!』となって、それでモンゴルに旅したんです」
――???(話が飛躍しすぎて理解できない)
「えっ、わからない? ごめんなさい」