●新型コロナの意外な「安全地帯」は貧困当事者支援
コロナ禍が世の中の重大関心事となり始めて以来、すでに約半年が経過している。手洗いやマスク装着は世の中の“常識”として根付いているように見えるが、感染者は再び増加しつつある。
しかも、感染発生は「クルーズ船」「施設」「夜の街」といった特定の場所に限られているわけではない。むしろ、増えているのは経路不明の感染例だ。何にどこまで注意すれば、「まあまあ安心だ」と思えるのだろうか。
ホームレスを含む貧困層や低所得層の支援現場は、意外な“安全地帯”かもしれない。このような現場で感染が拡大した事例は、日本では皆無、世界的にも皆無に近い。貧困の当事者たちの多くは、心身の状況が良好ではなかったり、高齢であったり、持病を持っていたりする。さらに、しばしば「情報弱者」であり、基本的なリテラシーを身につける機会にも恵まれてこなかったことが多い。
それなのに、こうした人々に対する支援活動を通じた感染拡大は、ほぼ皆無なのだ。ここには、あらゆる人々の「安全」「安心」のカギがありそうだ。
「特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやい」では、東京都新宿区の事務所での対面相談に加え、東京都庁での食糧配布や相談会を行っている。しかし、新型コロナ対策の観点から、事務所での活動に際してはスタッフやボランティアの人数を制限し、「3密」すなわち「密閉」「密集」「密接」を避けている。高齢であったり持病があったりする人には、無理に参加しないように促す。
また、その日の体調が思わしくない人には、参加を控えてもらう。もちろん、手洗い・マスク・消毒などの対策も行っている。「もやい」では4月以来、医師のアドバイスを受けて感染症対策をマニュアル化し、定期的な見直しを重ね、注意喚起を重ねているということだ。
「スタッフはもちろん、相談に来られる方にも遵守をお願いしています。守れない方には、参加をご遠慮いただいています」(「もやい」理事長・大西連氏)
しかし7月に入ってから、日本全体、特に東京都では感染者が増加している。一団体の対策には、限界があるだろう。それでも大西氏は、「できることをしながら、柔軟に」活動を続けていくという。万一の感染者発生に備え、一定期間の活動停止を含む対応計画も、すでに作成しているということである。