彼女は三姉妹で、毎日、三人で手分けをしてお母さんと一緒に料理を作っていたという。就職してからは忙しくて外食が多くなったが、結婚した相手が食通で、

「彼の影響で、家で料理を作らざるを得なくなった」

 とはいっていたが、夫に、

「何が食べたい?」

 と聞き、「カツ丼」「オムライス」といわれて、

「はい、どうぞ」

 と相手が満足できるものを出せるなんて、なかなかできない。その際も、彼と食べたいものが違う場合は、自分の食べたいものを別に作る。面倒だからと食べたくないものを無理して食べない。他人が作ってくれるのなら待っていればいいが、自分の分を作るとまた手間がかかるのに、それを惜しまない。それも料理が上手になる道なのだろう。

 そして彼女はインターネットのレシピサイトは一切、参考にしないといっていた。夫と二人で外食したときに、すべて直接、プロからコツを聞くのだそうだ。プロには主婦の料理とは違って、必ず一手間加える何かがあり、聞くとみんな親切に教えてくれるといっていた。彼女の料理は、いわゆる時短でも手抜きでもなく、それよりももうちょっと高いレベルの、プロのテクニック寄りになっているのだろう。

 もう一人の料理上手の友人については、以前、どのようにして彼女が料理上手になったかの過程を書いたことがある。彼女は来客が多い家に育ち、お母さんが作る料理を手伝っていたのと、結婚して義理の両親の食事を作るようになり、毎日、楽しく料理を作っていたわけではないだろうが、それが今、彼女の身についているわけである。彼女の作る料理がひと味違うので、どうしてだろうと作り方を聞いたら、やはり必ず一手間をかけている。時短料理がはやっているが、やはり手間をかけると味が違うのだなあと思った。きっと彼女のお母さんの料理の作り方は、今の料理法に比べて昔風の一手間かけた手順だったので、それが身についているのだろう。

 かといってすべての料理にそうしているわけではなく、手間をはぶいたものとそうでないものの味を比べて、市販のものを使っても問題ないとなると、それを買って使い、おいしくないと判断したものは、一手間かけている。出汁も料理によっては市販の化学調味料、保存料無添加のパック入りのものを使うが、麻婆豆腐や回鍋肉などは、市販の料理の素を使わずに、甜面醤、豆板醤、花椒、紹興酒などを使うという。それもそれぞれの家庭の家族の舌で選べばいい。

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