イラスト:オカヤイヅミ
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 毎日、食事を作っていると、もともと料理好きでないこともあるのと、同じものが続いても平気なので、よほど自分で、

「飽きた」

 と感じないと、新たにレシピを開拓しようとしない。たとえば基本の野菜炒めがあったとすると、肉の種類や野菜を多少替えたとしても、それほど変化はない。そうなるとどうしてもおかずのバリエーションが少なくなってくるのだ。

 私の外食といったら会食でのランチなので、おいしくいただいても、とても私の腕では再現できるような料理ではない。となると、料理上手の知り合いのお宅に招いていただいたときにご馳走になる家庭料理が、いちばんの参考になる。毎年、豪華なおせちを作っている、子供がいない夫婦二人暮らしの友だちのお宅に伺ったときは、手土産を、当時評判になっていたウエハースと、塩昆布、というわけのわからない組み合わせで持って行った。ウエハースを持っていこうと決めてデパ地下に行ったのだが、歩いているうちに、その塩昆布があまりにおいしそうだったので、私の分と彼女の分を一緒に買ってしまったのだった。カブを薄切りにして塩昆布を適量混ぜ、あればゆずなどを散らして冷蔵庫に入れておくと、ちょっとした箸休めになるので、便利に使っていたからだった。

 その日はボンゴレビアンコをご馳走になった。キッチンがアイランド型ではないので、私がぼーっと食卓の前に座って待っているのも変なので、彼女と一緒にキッチンの中にいて、何も手伝わないけれど、あれこれ雑談をしながら過ごしていた。もちろん話しながらも、作る手順を確認するのは忘れなかった。

 私はふだんパスタはほとんど食べないのだけれど、彼女が作る手順が私と変わらなかったのでほっとした。違うのは、私はアルコールがだめなので、アサリに火を通すフライパンに白ワインを入れないくらいだろうか。もしかしたらこれが劇的に違うポイントなのかもしれないけれど、このために白ワインを一本買うのもためらわれるので、いまだになしで済ませている。

 パスタも出来上がり、前菜としてトマト、バジル、モッツァレラチーズのカプレーゼが並べられた。

「簡単でごめんね。私がふだんお昼に食べているもので」

 彼女はそういったが、きちんとしたそれでいて気取りのないランチで、私は恐縮してしまった。こういうことが気軽にできる人は本当にうらやましい。見習いたいものである。私はうちに来客があった場合、お茶は出すが食事は出さないと決めて、食器等を処分してしまったので、やりたくてもやれないのだが、もしかしたらこれから気が変わるかもしれない。

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