なお気象庁は予報精度を上げるため、観測の強化を行っていく。線状降水帯を構成する積乱雲は、大気中の水蒸気量が多いと発生しやすいのだが、海の上は観測点が少なくなりがちなので、民間船にも依頼し、大気中の水蒸気量を観測する船の数を増やす予定なのだという。また、全国のアメダスの湿度計を増設するなど、陸上からの水蒸気量の観測にも力を入れていく。
さらに、今年の6月からは、気象庁は大学など14機関と協力して、線状降水帯の集中観測にも取り組む。集中観測に加え、スーパーコンピューター「富岳」を活用し、リアルタイムシミュレーション実験も行って、高精度な予測技術を開発する取り組みも進める。
線状降水帯の正確な予測は現在の技術では難しいため、今年はこうした取り組みで予報の精度が飛躍的に向上するわけではない。しかし、気象庁は今後10年を目標に、現在の地方ごとの予報ではなく、都道府県や市町村単位など、対象範囲を絞り込む形で線状降水帯の発生を予測できるようにしていくという。(ライター・今井明子)
※AERA 2022年7月11日号より抜粋