学園青春ムービーそのままだった学校生活では、お笑いにも夢中で、授業中はみんなを笑わせることに命をかけていた。

 高校生になると、嵐を呼ぶ巻き込み力がパワーアップする。

 2年の夏、嫌がる仲間をひきずって手作りイカダでの琵琶湖横断に乗り出したが、夜の大波で遭難し、ヘリコプターとパトカーが出動する騒動に。「仲間たちは水がトラウマになって1週間、風呂にも入れなかった」(鈴木)が、上田はブログに「あー、楽しかった。次は何やろうかな」。

完成披露試写ではキャストと一緒に800人の観客全員とハイタッチ(撮影/今村拓馬)
完成披露試写ではキャストと一緒に800人の観客全員とハイタッチ(撮影/今村拓馬)

■監督目指すもまわり道、詐欺にひっかかり借金も

 問題児だったが才能も突出していた。上田の映画を見た演劇部の顧問から「劇をやらないか?」と誘われて、2年のときに鈴木と入部する。地獄脱出のシュールなコメディー劇「デスケープ」を演出・主演して、3年で近畿総合文化祭で2位に。文系でゲーム好きが多い演劇部員たちは、最初、上田の暑苦しいほどの熱血青春ぶりに戸惑ったが、結果を出した情熱が感染し、部員も倍増した。

 卒業したらお笑い芸人を目指して吉本のNSCに入るか、映画監督か。最後まで迷った。でも勝ったのはやはり映画への愛だ。

 目指すはハリウッドと、滋賀から大阪に出て英語専門学校に通うも、2カ月で挫折した。バイト先では仲間の虚言に悩まされ、部屋を引き払ってしばらく鈴木の部屋に転がりこむ。

「その頃の上田は『青春の押し売り』感が凄かった。テンションを上げたい時、上田が『一生』って言ってくるんだけど、それにすぐ『青春!』と返さなきゃダメ。玄関に『今日の俺は最高!』と書いた紙を貼って毎朝、それを見てバイトに行くし、ノリが悪いのは全部悪で、遊んでて途中で帰るっていうと『めっちゃ寒い』と怒る。イライラするとケータイをへし折って『お前も折れ!』。ストレスがたまって体調が悪くなった」(鈴木)

 だが上田の押し売りは、人々を幸せにもした。上田も列席する地元の成人式式典で、成人120人全員のインタビューをビデオ上映しようと思い立つ。大変すぎると反対もされたが、ビデオ片手に全国に散らばる同級生を訪れ、コメントを取った。徹夜で編集作業して式典で上映し、自腹でDVDにして皆に配ると、反対していた人たちも、最後は涙ぐんで感動してくれたという。

暮らしとモノ班 for promotion
「プラレール」はなぜ人気なの?鉄道好きな子どもの定番おもちゃの魅力
次のページ